またしても世界が、世界が、ゆっくりと終わっていくぅ『カリスマ』

カリスマ [DVD]

カリスマ [DVD]

仕事終わりで、ビデオ1に行く。黒沢清の『カリスマ』と『ドッペルゲンガー』と『LOFT』を借りる。全部観てなかったんっす。すいません。黒沢清の映画はとにかく一筋ならではいかない。だからいっつも観るのが怖い。あと、ホラー映画を撮ってるというのもあったりして。

朝一で『1408号室』か『ブラインドネス』を観ようと思ったのだが、あまりの寒さにベッドから抜け出せず、断念。絶対にどっちも観たい映画なんだよぉ。あ、誰か『私は貝になりたい』を観てください。私は戦犯ものと呼ばれるものが大嫌いで、観るとムカムカします。なので、誰か代わりに観てください。何故イライラするかって、、、、分かるでしょ!!主人公の置かれた状況が悲惨すぎるし、何よりも軍国主義下における偉そうな兵隊さんどもを全員ぶち殺してやりたくなるからなんだよっ!っつーか観客がそう思うように映画は作られてるんで、ある意味で、監督さんや役者にいいようにやられてるわけだが、ホントに単純にこういう映画を観ると「戦争ってダメっ!こういう事繰り返しちゃだめっ!」ていう、小学校5年生のような感想しか言えませんっ!

映画観れなかったんで、黒沢清監督の『カリスマ』を鑑賞する。もちろんいろんな意見があるだろうが、見終わった後の感想はこうだ。

人間ってやっぱり価値観の違いと欲望にまみれてるっ!そして結局繋がりあえないっ!どーのこーの右往左往してる中でやっぱり孤独だ!そして個人が生きるという事は世界と対峙する事であって、自分のせいで何かが犠牲になった時、世界は己に牙をむいてくるっ!

『カリスマ』はメタファーだらけで好きなように汲み取れるように映画が作られている。そして、時にサスペンスに時にコメディに時に底冷えするような恐怖を味わう事になる。

役所広司演じる主人公は刑事で、人質をとって立てこもった犯人を説得しに行くが、人質も犯人も助けられずに両方を殺してしまう。そして役所は「世界の法則を回復せよ」という謎のメッセージを死んだ犯人から受け取る。事件後、役所広司は森に迷いこむ。そこはルールや法則があまりみられない不思議な場所だった。

その森では「カリスマ」と呼ばれている木があり、この木は人工的に持ち込まれたものだが、役所はこの木がある事で森がいずれ枯れてしまう事を植物学者に教えられる。ところが、そのカリスマを育てている若者は、カリスマは他の生命を奪って何千年も生き続ける木だと、カリスマの重要性を主人公に説く。森の生態系を壊しているカリスマは強い物が生き残るという弱肉強食にも法った木なのだ。さらに、森を本来の形にするために、森全体を殺してゼロにしなければならないという事まで出て来て、それをすると、今度はいろんな生態系にも影響が出て来てしまう。

カリスマとも呼ばれてる大事な1本の木を守るか、それともその木を殺して、森を生かすのか、犯人と人質を両方生かせなかった男は再び選択を迫られる。おもしろいのはカリスマを守る青年もカリスマを殺そうとしてる学者も「森を守らなくては」という強い信念を持って生きている。ただ、そのアプローチが違うだけなのだ。

もしすべての人間が消えてなくなったとして、世界の法則が消えたとき、やはり強い物が生き残るだろう。そうならないために人はどうやって生きていけばいいのか?

『カリスマ』を観ると、いろんな事が浮かんでくるし、いろんな意見があるはずなので、やっぱり自分で観て、自分で判断するのが1番いいだろう。少なくても私は、映画のラストに驚いた。森が焼かれるかわりにやっぱり世界が……あー!もう!またかよっ!