ジェイコブス・ラダー


仕事の休憩中や、出勤直前など利用して新約聖書を読み耽ってて、最初は説教臭いしつまんねーなぁと思ってたんだけど、キリストが起こした奇跡だとか、受難までの経緯が出て来て、そのくだりからなかなか楽しめた。まだ全部の福音書までいってないけど、んで、読んでて思った。キリストってのは、死んだ人を蘇らせたり、病気を治したりして、人々を救い、んで無実の罪で処刑されるっしょ?これでピーンときたんだけど、これってさ『グリーンマイル』の黒人の死刑囚のヤツじゃん。有名な話なのかなって思って検索したら、すげぇボコボコ出て来て驚いた(笑)『グリーンマイル』はキリスト処刑の現代版なんだな。しかも黒人ってのがいいね。んで、確かに『グリーンマイル』は分かりやすいキリストのメタファーだけど、これさ、もう一個あんだよ。無実の罪で逮捕された男が周囲の人々を癒して、奇跡のようなエピソードを残して、その男はある日突然消えて、周囲の人々が彼の伝説を語り継ぐ。。。。。ここまで書けば分かると思うが『ショーシャンクの空に』だ。んで、これ両方スティーブン・キング原作で、おや?と思って思い返すと、去年の『ミスト』や『1408号室』『キャリー』もキリスト教に関わる事が出てくるぞ。スティーブン・キングってクリスチャンなのか?でも『ミスト』や『キャリー』では狂信的なクリスチャンの恐ろしさを描いてるしなぁ。

てなわけで、仕事終わりで、ビデオ1に寄り、キリスト関係の映画を一気にレンタルした。レンタルしたのは以下の通り。

『パッション』前に観たけど、今見ると楽しめるかなぁと思って。
ジェイコブス・ラダー』これも観たかった作品。
ウィッカーマン』リメイクの方じゃないよ。オリジナルだよ。
13日の金曜日』これはリメイクが公開されるので久しぶりに。

帰って『ジェイコブス・ラダー』鑑賞。ベトナム戦争で重傷を負い、名誉除隊で帰国したジェイコブ。銃剣を突き立てられくずれ落ちた瞬間に地下鉄で寝ているシーンから映画は始まる。地下鉄を降りるとそこは閉鎖された駅。線路伝いに戻ろうとすると急に列車が猛スピードでやってくる。その瞬間に家に帰ってくるジェイコブ。これは夢なのか、現実なのか。。。。

ハッキリいってこれは傑作だ!エイドリアン・ラインお得意の光と影のスタイリッシュな映像とリンチを彷彿とさせる生理的に嫌な生々しい映像。この相反する物をめまぐるしいカット割りで構築し、さらに現実と幻想が入り乱れた展開の中に、エロと戦争と家族愛とサスペンスとホラーとバイオレンスという映画に必要な要素を全部ぶち込んでいる。主役を演じたティム・ロビンスの演技がとにかく素晴らしく。彼の演技が無ければこの映画は成立しなかったんじゃないかと思わせる。もちろん、ダニー・アイエロやブレイク前のマコーレ・カルキンは殺人的なかわいさでまるで天使のような存在感を見せつける。

ジェイコブス・ラダーとは旧約聖書の中に出てくる、ヤコブのはしごを意味する言葉。映画の中でラダーは階段と訳されていたが、Ladderを辞書で引くとしっかりはしごと出てくる。ジェイコブとはヘブライ語ヤコブの英語読みで、英語の性や名に使われている。ちなみにジェームズというのもヤコブのジェイコブから来ている。旧約聖書ヤコブのはしごが出てくるエピソードはこれ。

彼は夢を見はじめた。見よ、地の上にはしごが立ててあり、その頂は天に達していた。そして、見よ、神のみ使いたちがそれを上ったり下ったりしているのであった。しかも、見よ、エホバがその上方におられて、こう言いはじめられた。

「わたしは、あなたの父アブラハムの神、イサクの神エホバである。あなたの横たわっている地、わたしはそれをあなたに、そしてあなたの胤に与える。そしてあなたの胤は必ず地の塵粒のようになり、あなたは必ず西、東、北、南へと広がるであろう。あなたにより、またあなたの胤によって地上のすべての家族は必ず自らを祝福するであろう。 そして今、わたしはあなたと共におり、その行くすべての道であなたを守り、あなたをこの地にまた戻らせる。わたしは、自分があなたに話したことをし遂げるまでは,あなたを離れないからである」。

その後ヤコブは眠りから覚めて、こう言った。「エホバはまさにこの場所におられるのに,わたしのほうはそれを知らなかった」。そして彼は恐れを感じ、加えてこう言った。「ここは何と畏怖すべき所なのだろう。これは神の家にほかならない。これこそ天の門なのだ」

創世記28章12-16節

実はこの文面が見事にラストに直結しているのだが、とにかく幻想的な映像の中に冷水をぶっかけるようなラストが鮮烈。似ているのはキューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』だと思うが(ラストの唐突な感じも似ている)、それよりも幻想的で、エロくて、サスペンスフル(しかも短い)DVDのレンタルはされてなかったが、リンチやクローネンバーグが好きなら絶対必見である。

ジェイコブス・ラダー [DVD]

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