オリオン座からの招待状

オリヲン座からの招待状 [DVD]

オリヲン座からの招待状 [DVD]

19日深夜
オリオン座からの招待状』鑑賞。庶民の娯楽が映画だった頃から、TVの登場によって、映画産業が衰退していく時代背景と共に、貧乏になりながらも映画を愛し、映画館を存続させた二人の男女の物語。

ぶっちゃけ、普段だったら観る事のない映画なのだけれど、BSで放送されていたヤツをおかんが録画していたし、加瀬亮が出ていたので観る事にした。ぼくは役者には1nanoも興味ないのだけれど、唯一、世界中の役者の中で加瀬亮だけは気になって観たくなってしまう。今や、いろんな映画に引っ張りだこだが、それも頷けるくらい、ぼくも加瀬亮が気になってしまうのである。

さて、加瀬亮だけが目当てで観たのだけれど、これがどうして、なかなかの良作だった。浅田次郎原作でもおもしろい映画はあるじゃないか!

あまりこういう言葉を使うと「えっ!?」って思われるかもしれないが、これは日本の『ニュー・シネマ・パラダイス』だ。さらに小津や成瀬といった、古き良き時代の邦画の雰囲気も感じるし、映画への愛も映像の隅々から溢れている。

セットがとにかく素晴らしく、特に成瀬映画からインスピレーションを得た様な路地裏の作りが素晴らしい、CGも使われているのだが、最低限にとどめていて、アンチ『三丁目の夕日』という感じですごくおもしろかった。箱庭感は抜群でセットを大切にしている映像がホントにウエルメイドで心温まる。

宮沢りえ原節子高峰秀子のような佇まいでビシっと映画全体を締め、不思議な浮遊感を漂わせる加瀬亮もハマり役、変化球と思われた宇崎竜童も威厳がちょっと足りないくらいで、これまた素晴らしい演技を披露している。

倦怠期の夫婦が昔通った映画館のオリオン座に行くという視点で描かれた原作をまったく違うモノに変えてしまった脚色は大正解で、そのおかげでこれだけの映画になったと思うのだが、その原作の視点がわずかに冒頭と最後に残っていて、そのせいで視点が散漫になってしまっているのは明らかなマイナスポイント。まぁ、あとぼくの嗜好から言わせてもらうと悪人が一人くらいしか出てこないというのも厳しいが、映画が庶民の娯楽だった頃の寓話と考えれば納得出来る。

宇崎竜童が亡くなるシーンの演出が見事で、観客の想像力でもって、シーンを補填させるというのが非常に良い。セリフやナレーションで説明せずに、最低限の動きと映像でもって観客に理解させるシーンがある映画というのは心が豊かになるなぁと改めて思った次第。

てなわけで、『オリオン座からの招待状』はまったく原作と違う、映画ならではの脚色とキャスティングとセットとウエルメイドな演出が見事に噛み合った良作。加瀬亮好きや『ニュー・シネマ・パラダイス』好きは観て損無し。

20日
トップランナー鑑賞。西川美和監督がゲスト。『ゆれる』が猛烈に観たくなる。

20日
ビデオ1に行き『ゆれる』をレンタル、そして鑑賞。大変素晴らしい映画だったので、感想は明日、あういぇ。