ゆれる

ゆれる [DVD]

ゆれる [DVD]

20日

こんなマンガを読まれてしまったら、オレがいかに人でなしなのか、みんなにばれてしまう、どんなに丁寧語で話しても最悪な人格なのが全て見透かされてしまい、今後上辺をどう取り繕ってもどうやっても取り返しようがない、そんなマンガです。でも、だからこそ、面白いんじゃないでしょうか。あんまり面白くてびっくりする人も中にはいるかもしれないです。

これは、古泉智浩氏が『ワイルド・ナイツ』の発売の時に寄せたコメントである。

例えば、ぼくは人格者なんかじゃない。社会というレールからはギリギリのラインで逃げ続けたいし、大人は嫌いだし、そもそも組織というものに適応なんてきっと出来ないでしょう。いや、出来るはずなんですが、それがぼくの本心ではない気がします。ぶっちゃけ核戦争後の世界にとっととなればいいとは思うし、あっさり他人に殺意も抱くし、でも、そんな事は普段から言ってるわけではなくて、「あー、あの娘とセックスだけでいいからしたいなぁ」と思っても、そんな事面と向かって女の子に言ったとたん、全力で嫌悪感をむき出しにされる事でしょう。

それでもぼくはわりかし普段からそういう事は口にしてる方だと思いますが、こういう事を普段から口にしない、しかもかなりの人格者であるヤツが、急に、「あーあいつの事本気でぶっ殺したいと思ったから殺しかけた」とか言い出したら、どうです?引きませんか?そして、それがそいつの本性だなと知った時、長年良い人だと思って付き合ってきたあなたはどういうリアクションを取るだろうか。

『ゆれる』はまさに人間が持つ二面性にスポットを当てた切れ味鋭い傑作である。むしろ人間の二面性だけにスポットを当て、その二面性の狭間で揺れ続ける男の話だ。

幼なじみと兄と一緒に渓谷に来た主人公が遠く離れてる時に事件は起きる。兄と幼なじみが吊り橋を渡り主人公がよそ見してる間に幼なじみが吊り橋から落ちたのである。事故か殺人か、人格者か悪人か、恋愛かセックスか、様々な裏表を見せつけられる主人公はその狭間でタイトル通り「ゆれる」事となる。

この世はすべて二極化されてる傾向にあると思う。おもしろいかつまらないか、良いか悪いか、好きか嫌いか、泣けるか泣けないか、ところが人間は二極化で消化出来ない、複雑な生き物だ。女の子に優しくした後、その子をぶっ壊すようなセックスをする間に、様々な駆け引きやいろんな感情が渦巻くのと一緒である。

古泉智浩氏の『ワイルド・ナイツ』同様に地方都市の風景がやさぐれる要因にもなってるように思うし、ロングショットを多様する事で感情のゆらぎをこちらに提示しなかったりと、映像も一筋縄ではいかないようになっていて、クローズアップもここぞという時以外に使用していないところも好感が持てる。

ラストも好きだ。賛否別れる結論だろうが、まさにそれも含めて「ゆれる」なのだ。最初から最後までハラハラしっぱなしの二時間。至福の時間を過ごさせてもらった、西川監督ありがとう。

20日
朝の4時まで仕事、帰る時どしゃぶりで、濡れながら帰った。

21日昼
コアントローを買い、その後、ブックオフにて、ヒロモト森一の『武死道』と古屋兎丸の『Marieの奏でる音楽』新井英樹の『キーチ!!』それから『北斗の拳完全版』の二巻を購入した。ヒロモト森一という人はまったく知らなかったのだけれど、タイトルだけ見て、立ち読みしたら、絵がぼく好みだったので買った。読むのが楽しみである。あういぇ。