ワイルド・ナイツ

ワイルド・ナイツ 1 (アクションコミックス)

ワイルド・ナイツ 1 (アクションコミックス)

ワイルド・ナイツ 2 (アクションコミックス)

ワイルド・ナイツ 2 (アクションコミックス)

「地方都市でパチスロの店員をしている30歳の男の話で、本当にどうしようもないセックスと暴力の日々なんですけど、それがリアルなんですね。国道沿いにファミレスとコンビニしかないような地方都市にいたらこうなるしかねえべな、と思うような。読んでいてすごく嫌な気持ちになるんだけど、でも最後には人間は醜いものだけど否定すべきものではないと教えてくれる展開になるんです」
ーーーーー大槻ケンヂ/ミュージシャン

「いまどき男子の誰もが抱えるどうしようもない混沌(おもに暴力衝動とエロ)をひたすら追求していく、という意味も含めてゼロ年代版の『血と骨』ともいうべき大傑作の誕生と断言したい」
ーーーーー大西祥平/マンガ評論家

「すごいものを読んでしまった。漫画アクション誌で連載されていたころから話題になっていたが、それも納得の大傑作。泥沼を這いずった結果、主人公がたどりつく衝撃のラストはすばらしい。泣けた。マンガ評論家の大西祥平さんが、まるで現代版「血と骨」のようだと激賞するのもある意味納得。さびしき地方青年を描いた文学性の薫りが漂う作品に仕上がっているように思えた。必読。」
ーーーーー深町秋生/作家

と各方面で絶賛されている古泉智浩さんの『ワイルド・ナイツ』を読んだが、確かに、納得の大傑作だった。メジャー感が漂う傑作『転校生 オレのあそこがあいつのアレで』に比べると、かなりダウナーで内省的な部分が出ているが、ストーリーテリングも街の描写力も各キャラクターのリアリティも含め、すべてを出し切った渾身の作品にも思える。『血と骨』のようだと言われているが、ぼく自身は現代版『人間失格』のようにも感じた。音楽で言えば、Weezerの『Pinkerton』やBlurの『blur』である。死にたいほどの現実と他者に対する殺意と暴力、そして、ヤッてもヤッても治まらない性欲と虚しさ、虚無感がむき出しになった中で訪れる衝撃のラスト、全てが完璧に機能した珠玉の作品だ。

主人公の国森は32歳でパチンコ屋の店員、婚約した彼女が居るのだが、互いの妥協しない性格に結婚生活の破綻を感じ、結婚二ヶ月前に婚約を解消、すると、婚約不履行だと相手から弁護士を通して、訴訟を起こされる。その賠償額は300万円。しかも相手は妊娠中だという事も知らされる。自分に息子が出来、大きくなってから復讐されるかもしれないと思った国森は空手を習い始めるのだが、その動機とは裏腹に内に秘めた暴力性が出始め、、、

ぼく自身、運転マナーの悪いヤツは事故って死ねって思うし、態度が横柄なジジイやこうるさいだけのガキは抹殺してやりたいし、レイプする事を想像してオナニーしてしまう事だってあるので、『ワイルド・ナイツ』の主人公の気持ちがよく分かる。

ワイルド・ナイツ』の国森はめんどうな事に巻き込まれるのがイヤ(自身が被告人という事もあり)という理由で、殺意や暴力性を持っても、キレる事なく、脳内で常に人を殺し続け、さらに彼女と会ってもセックスの事しか頭になく、好きと性欲が混同してしまい、相手の事を傷つけるはめになってそこからテレクラにハマってしまう。どうしようもなくダメな男だが、これに当てはまる人も大勢いるんじゃないだろうか。ぼくはこの主人公の思ってる事や言動、行動などにはとても共感出来てしまうのだ。

マンガはさらに暴力と性の混沌とした世界へ突入していくのだが、この暴力と性を追求し続けるだけの生活にやがてピリオドが打たれる。このピリオドの打ち方が絶妙で、ある程度の挫折だったり、別な生き甲斐の発見だったりするのだけれど、リアルとフィクションのギリギリのラインを狙って、読者を心の底から納得させる事に成功している。

特に各方面で言われてるようにラストが素晴らしい、唐突かつ説明のない急な展開のラストはゴダール映画のようでもあった。(作者自身はゴダールが嫌いなのだけれど)

あと新潟に住んでる観点から言わせてもらうと、新潟の風景が生々しくリアル。白根に向かう8号線、ビデオ1、ラブホテルのチェリーやクイーン(クイーンには行った事あるだけに!はうっ!)などが、うらぶれる国森に追い打ちをかけ、暴力と性に墜ちて行く要因にもなってるように思える。

ハッキリ言って、バイオレンスとセックス、うらぶれた現実、イヤミな人間しか出てこないので、ハッピーな気持ちにはならないし、読む人を選んでしまうが、作者の内面をえぐりとったような『ワイルド・ナイツ』は傑作だ。必読!

15日夜
『レスラー』を見終えた古泉さん達とサイゼで談笑。『ワイルド・ナイツ』に出て来る「あばばばば」というギャグがBerryz工房からの引用だという事を妹が見抜いたので(ちなみに妹も古泉智浩さんのマンガのファンである)、その事を話したら、その通りだと言っていた。機会があれば妹とハロプロのお話をしてもらいたいものだ。あとがきで『血と骨』を読んでないと書いていたので、お土産に持って行った。

古泉さんからはおすすめの映画2本をお借りした。近いうちに感想を書こうと思う。

そして、前回同様ビデオ1に行って解散。

16日昼
11時過ぎまで寝てしまった珍しい。『ワイルド・ナイツ』を読み返したが、やはりおもしろい。とっとと『ピンクニップル』も買おうと思う、あういぇ。

チェリーボーイズ

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