アンビバレントな男の本音満載!『ピンクニップル』

新津の英進堂という本屋まで行き、古泉智浩さんの『ピンクニップル』を購入。

ピンクニップル

ピンクニップル

英進堂は置いてある本のセンスがいいというか、ヴィレッジヴァンガードの本棚を強力にしたようなサブカル寄りの書籍が並び、いつも行くだけで「これおもしろそう」とか「これ読んでみたいなぁ」と思わせる独特な雰囲気の本屋である。もちろん品数や中身ではジュンク堂には敵わないのだが、小説しかり、専門書しかり、ホントに「誰が買うんだよ!」と思ってしまうラインナップで、こういう本を率先して売ろうという本屋さんを応援したいという気持ちもあって、ぼくはここで本を買う事が多い。

英進堂blog

さて、『ピンクニップル』だが、ぶったまげた。強力なマンガだった。大概の男が思うであろう、恋愛とセックスに対することが赤裸々にぶちまけられていた。

そもそも古泉智浩さんの作品で『転校生』というのがあって、これは男と女の恋愛とセックスに対するスタンスの違いを見事に描き分けた傑作だったのだが、『ピンクニップル』では、恋愛よりもセックスの比重が多いことについて、さらに深く踏み込んでいる。短編と中編二本が収められたマンガなのだが、主人公…というか登場するのは全員「セックスがしたいだけ」の男だ。

「友だちロボット」という短編では孤独に生きることをあまり苦痛と思ってない引きニートの主人公に友達が与えられる。それは女型のロボットなのだが、その男がいきなりやることはそのロボットのおっぱいを触ることで、「こころ」という作品の主人公は、登場するなり、一緒に暮らしてる女に対して「一回もセックスさせてくれない」と嘆くところから始まるし、本のタイトルにもなっている「ピンクニップル」では愛されてることに安心しきって、彼女とセックスをすることしか考えてない男が主人公だったりする。

そもそも、男の性欲というのはとどまるところを知らない。たまに異常だと思うときもある。恋愛という言葉を置き去りにして、恋愛することが心底めんどくさいと思うほど性欲で頭が麻痺することもしばしばだ。セックスすることを愛してるという言葉に置き換える時もあれば、愛してるからセックスするのか、セックスするから愛してるのか分からない時もあり、女の人は一緒にいる時のムードが大事だろうが、男にとってはまったく関係なかったりするのだ。セックスがしたくてたまらないというトランス状態に陥ってるときは一緒にいる空間を楽しむ余裕などなく、それ故に相手を傷つけることもある。

ところが、性欲が先行しながらも、男というのは何処までも自分勝手な生き物で、行動と考え方が伴ってない時があり、じぶんの浮気や女遊びはなんとも思ってないのに、何処か女の人には純粋で居て欲しいと思う節があり、女の人の浮気を許せないと無茶苦茶なことを思ったりする。毎日メールが来るのがうっとうしいなぁと思う一方で、ケンカしてメールが来なくなったりすると、急に何をするにも手につかなくなったりするのだ。

大多数の男がそうだとは言わないが、そんな自分勝手なセックスや名ばかりの恋愛がまかり通ることもなく、『ピンクニップル』の主人公達にはある種の制裁が下る。終わり方に特徴のある古泉作品の中でも、特に最後に収録されてる作品のラストが強烈で身につまされる。泣けた。

というわけで、男があまり表面的に言わないようなことが満載の『ピンクニップル』は世の男性諸君に是非おすすめしたい作品。あとがきも含めて、胸に突き刺さること必至だ!あういぇ。