『バニー・レークは行方不明』を観たっ!
月曜日:『スペル』を観ようと思っていたら、古泉智浩さんから電話が来た。
「あ、どもー、カトキチさん、今日『スペル』観るんでしょ?『PUSH』って映画知ってる?あれ観ようよ。」
『PUSH』は名前だけ知っていたのだが、その日は『スペル』を観た後にバイトだったので、次の日のレイトを観に行く事になった。時間を21時45分と確認する。ちなみに『スペル』は『ダークマン』以降のライミ作品ではダントツの最高傑作だったのだが、感想がみなさんとかぶる……
火曜日:21時45分からだから、21時くらいに出ようと思ったのだけれど、いつも古泉さんと映画行く時は何故か時間を勘違いするので、ブログのコメントを返して再度確認。すると……なんと、21時25分と書いてあった――――時計を確認すると、21時10分。これはまずい、また時間を勘違いした。しかもギリギリ本編に間に合うかどうかだ。というよりも、もしかしたら古泉さんは先に行ってる可能性もあるっ!!
急いで古泉さんに電話する。
「もしもし!!すいません21時10分なんですけど!!映画25分からでしたっ!!じぶん勘違いしてました、今どこですか!?!?」
「ああっ!!まだ家に居た!!」
なんという奇跡。
そこから猛ダッシュでワーナーへ。ぼくは本編に間に合う時間に着いたのだけれど、古泉さんは本編が始まって2分くらいにやってきた。二人とも時間を勘違いしたのかと思いきや、古泉さんは「21時には着いてるはずだったんだけど、飯喰ったら、うとうとしちゃってさぁ、がははは!」と、単に寝坊であった。
どうするか分からなかったのでチケットは買ってなかったが、出だしがすごい映画だったら困るということで、観るのを止めることにした。その時に、ぼくは古泉さんが『バニー・レークは行方不明』を録画してたことを思い出し、それを古泉さんの家で観ようと提案した。マックでコーヒーを飲みながら2時間近く喋り、古泉さんの家で『バニー・レークは行方不明』を鑑賞。
『バニー・レークは行方不明』は「町山智浩のアメリカ映画特電」で軽く有名になっていた作品で、ぼくもこれで知ったクチだったので、絶対に観たかった。
ポッドキャストのネタバレの部分まで聞いてたのに、その部分をすっかり忘れてるという体たらくなので、観るにはちょーどよい。んで、ごゆるりと観たわけなんだけども、これがものすごくおもしろかった。
ぼくは映画にハマっていろいろ見始めた頃に『或る夜の出来事』という大傑作を観て、「ああ、なるほど、世界中のラブ・ストーリーはこの映画が原点なんだな」と思ったのだが、『バニー・レークは行方不明』もそういう一本で、近年の『フライト・プラン』や『フォーガットン』にしっかり先輩風を吹かせている。
今言ったような、「子供の存在証明が無くなって、まるで居なかったことにされて、主人公が頭おかしいんじゃないか?と疑われる映画」を観ていれば、『バニー・レークは行方不明』がどういう映画かというのはお分かりいただけるんじゃないかと思うが、作品を観てすげぇなと思ったのが、カメラワークと長回しの多用だ。
『バニー・レークは行方不明』はとにかくカメラワークが凝っていて、さらにワンカットが長い。ハッキリ言ってしまえば、デ・パルマ映画のそれのようである。ところがテクニックをひけらかすわけではなく、映画のサスペンスを高めるための徹底した追及を感じる。そして、さらに驚くのは撮影のうまさだ。
猛スピードでトラックアップしながらキャラクターの顔にクローズアップするとか、車の中から主人公が出ると同時にカメラも出て来るとか、ドリーを使った形跡が見られないのに、ぶれることなくトラックバックするとか、サム・ライミのシェイキーカムみたいに新たな技法を発明したのか?と思うほど撮影テクニックは多彩である。しかもこれらの超絶な撮影を長回しの中に取り入れているので、観てる方に尋常じゃない緊張感が生まれる。流れるように移動していくカメラはステディカムを使ったように思わせるが、映画が作られたのは65年なので手持ちカメラなのだろう。まったくブレることなく撮影しているので、綿密にリハーサルをし、練習をつんだと思われる。
緊張感が持続すると言えば登場人物の配置の仕方だ。出て来る主要なキャラクターがみんな狂っていて、誰がホントのことを言ってるのか分からないというのもうまい。行方不明になる子供、バニー・レークの姿を見せなかったのも「もしかしたら、主人公の妄想なんじゃないのか?」というサスペンス性を高める効果を生んでいる。
オープニングクレジットがものすごく凝っていて、ヒッチコックの『サイコ』を思わせるが、調べたら、ソウル・バスのお仕事だった。サムズアップ!
始まってから最後まで目が離せないので、もしWOWOWに入ってる方はなるべく事前情報無しで鑑賞することをおすすめしたい。さらに『フライト・プラン』や『フォーガットン』を観ておくと、『バニー・レークは行方不明』の偉大さが良く分かるはずだ。
見終わって大興奮し、今度はガストへ行った。1時半を過ぎていたが、ステーキを喰らった。古泉さんにおごってもらった。ホントに申し訳ない。申し訳ないので、今度『愛のコリーダ』のBD買って、家で鑑賞会しようと思う。あういぇ。
関連ポッドキャスト
町山智浩のアメリカ映画特電 ― 第17回 トラウマ映画館1 行方不明映画の最高傑作『バニー・レイクは行方不明』
http://www.enterjam.com/podcast/tokuden/tokuden017.mp3
↑で町山さんはキア・デュリア演じる主人公の兄を弟と言っているのだが、恐らく勘違いではないかと。