メインが役者ではない映画『色即ぜねれいしょん』

DVDで『色即ぜねれいしょん』鑑賞。

色即ぜねれいしょん [DVD]

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田口トモロヲ監督の前作『アイデン&ティティ』が大変素晴らしかったので、観たかったのだが、不思議と映画ってのはタイミングを逃すと観る気が失せますよね。なんでだろう。

ボブ・ディランに憧れる平凡な高校生の青春物語で、言ってしまえばそれ以上でもそれ以下でもないけど、やはりみうらじゅん御大ということで、セックスに対する憧れと恋愛に苦悩する文系ロック青年の悩みが爆発していて、非常に男心をくすぐられる作品に仕上がっている。フリーセックス主義がたくさんいるかもしれないというだけで、旅行しに行くところなんかは水着のちゃんねーを見るために海に行くのと発想が似ていて素晴らしいと思った。冒頭の悲恋を妄想するところからDTマインド全開と言っていい。

ただ、エロネタは豊富だが、演出自体は非常にウエルメイドで、奇を衒ったことは一切していない。むしろド直球なシーンが結構出て来るくらいである。

おもしろいなぁと思ったのは、印象的なキャラクターが全員本職の役者さんではないということ。

渡辺大和と岸田繁峯田和伸は全員バンドのフロントマンなんだけど、彼らの演技がホントに素晴らしく、田口トモロヲ監督は役者の演技を引き出すのがとにかくうまいんだなぁと思った。岸田繁なんかはものすごく抑えた演技でそれが役に合っている。藤原竜也と共演させたらきっと互いが互いの個性を殺しまくるだろう。演技自体が初体験である渡辺大和も表情の引き出しがとても多く、男前ではないが、魅力的な人を惹き付ける役者さんの雰囲気。臼田あさ美もそこまで良い印象はなかったんだけど、この映画ではゲロぶっかけられたり、水着になったりと女優魂をキッチリ見せてる。

特にクライマックスのライブシーンは面目躍如と言った具合で、渡辺大和の魅力が大爆発。『アイデン&ティティ』でも、死地に向かうワイルドバンチのようにライブシーンを撮ってたけど、あの演出と通じるものがあった。

というわけで、『色即ぜねれいしょん』は奇を衒った演出をしなくても、役者の演技を魅力的に映せばおもしろい映画になるという見本のような作品だった。監督は個性的な映画にばかり出演しているのに、映画はド直球であるというところもユニーク。主題歌は村八分の『どうしようかな』を出演しているミュージシャン三人がカバー。これがまた良い。あういぇ。