ショック!残酷!『クリスマス・キャロル』の世界


9時半にロバート・ゼメキス監督作『Disney's クリスマス・キャロル』鑑賞。しかし、このDisney'sってのいるか?いらないだろ?

様々な物語に影響を与え、いまだに語り継がれる名作中の名作を『ポーラー・エクスプレス』や『ベオウルフ』の技術を用いてロバート・ゼメキスが映像化。『ハッピー・フィート』もそうであったが、オープニングクレジットのダイナミックな長回しや空撮はこれからスタンダードになるんじゃないかというくらい完成されていて、実写と見紛う質感はここで言うまでもないだろう。

さて、『クリスマス・キャロル』は物語の配分がちょっとおかしい。もし『クリスマス・キャロル』を3つのパーツに分けるとしたら、まず守銭奴で死んでも誰も悲しまないスクルージのキャラクター紹介があって、次に3人の亡霊が見せる過去、現在、未来のパラレルワールドのくだりがあって、そして、改心したスクルージが人々に良いことをし始めて、みんなに愛されめでたしめでたしという風になると思うのだが、このラストのパーツがものすごく短いのだ。

しかもパラレルワールドを行き来するシーンは、これでもかこれでもかとビュンビュン空を飛び、やたら引き延ばしにかかってる感じすらするのに、何をスクルージがしたのか?というくだりは七面鳥を買って、寄付して、家に行くくらいで、実際その後どうなったのか?というのはボブという書記に語らせて終わってしまう。

一番心温まるシーンが速攻終わってしまう『クリスマス・キャロル』だが、その代わりにこれでもかと見せてくれるのは守銭奴ジジイが味わう無限ループのような地獄巡り!!とにかく凄まじい!『ショック!残酷!『クリスマス・キャロル』の世界!』というタイトルでも納得してしまうくらいの地獄絵図がとことん展開されていく。

『ベオウルフ』でアンジーのヌードに肉片飛び散る残虐世界をクリエイトし、ホラー制作会社ダークキャッスルを立ち上げたゼメキスだけあって、彼の手にかかると『クリスマス・キャロル』も本当に観たくないような残酷な世界が次から次へと出て来る。しかも、けっこうエグイ。子供が見たら泣いてしまうんじゃないかと心配してしまうほどだ。

ドアノブに乗り移った幽霊はホラー映画のようだし、かつての共同経営者も朽ち果てたゾンビのような佇まいで、なおかつ、叫び過ぎて口が裂ける描写はダークキャッスルの映画に出て来るほど気持ちが悪い。しかも窓の外には死んでも死にきれない幽霊がうようよ。過去に行っても、ひとりぼっちの姿を映し出したと思ったら、バイオリン弾きがスープに突っ込んだり、現在の精霊の死に様はひからびて、肉片がはじけ飛び、白骨化する。未来の精霊は真っ黒な馬車に乗って、執拗にスクルージを追いかけ回す。さんざん走り回ったあとでサイズを縮められてしまったスクルージは下水パイプの中に入り、『ショーシャンクの空に』のように這いずって出て来た後、ネズミと一緒に叩きつぶされそうになり、とどめに『スペル』の如く、お墓の中に引きずり込まれてしまうのである。ぎゃー!!!

と、このように心温まる物語のはずが、どこかダークで歪で得体の知らない恐怖に追いかけ回されるホラー映画になってしまった『クリスマス・キャロル』は、観た者にショック!残酷!を与える恐怖の怪作。これはある意味で必見だ!!あういぇ。

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