安心安全のホラー映画『インシディアス』

インシディアス』をレンタルDVDで鑑賞。

家が呪われてるっぽく、息子がその影響でこん睡状態に陥ってしまい、なんとかしようと奮闘する家族の物語。

製作に『パラノーマル・アクティビティ』のオーレン・ペリ、監督は『SAW』シリーズのジェームズ・ワンということで、そのあらすじからある程度予想はしていたのだが、ホントに『パラノーマル・アクティビティ』を100倍くらいの制作費でド派手に作り直していただけで驚いた。それでも150万ドルという低予算なのだからさらに驚く。

とにかくキャッチャーミットを構えていたら、そこに来て欲しい球がずばり来た感じ。餃子の王将すき屋のあいがけカレー、大戸屋黒酢あんかけ………安価でお腹いっぱいになり、そこそこにうまい。そういう映画。とは言っても映画は一律の料金だが………ダークキャッスル社の作品のように飛びぬけた傑作ではないけど、観て間違いはない安心した超定番のホラー映画。

実は『SAW』があまり好きではなく、コマーシャル出身の監督さんっぽいチャラチャラした映画だなと思っていたのだが*1、そのあとの『狼の死刑宣告』がとんでもない大傑作だったので、そこから一気に株があがったジェームズ・ワン。今作では奇をてらった演出はほぼ皆無で、ホラー映画のツボを抑えた丁寧な作りで観るものを圧倒させる。ものすごく怖い一方、ものすごくうまく撮っていて、その時点で関心した。本人も意識して丁寧なドラマをつむごうと思ったのだろう。例によって家から一歩も出ないような展開だが、何かが起こりそうで、バンバン超常現象が起こる緩急のつけ方などとにかく見事。

そしてこの作品、後半からまったく予期しない展開になり、この辺が『パラノーマル〜』とは違う映画にしたいという作り手の意志を感じる。言ってしまえば金のかかってない『コンスタンティン』なのだが、撮り方がうまいため、金がかかってない映画には感じない。『SAW』が作りたかった映画だとすれば今回は職人監督に徹しているようなきらいがある。

というわけでこういう映画が五週もランクインするとは素晴らしい国民性だなと思うのだが、和製ホラーに負けてられんとあえて、アメリカらしいテイストを入れつつ、地味なホラーに仕上げたんじゃないかなぁという邪推までしてしまった。それくらい本当に丁寧な作品、このヒットにダークキャッスルも嫉妬したのではないかなぁ。良作です。あういぇ。

インシディアス [DVD]

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*1:ただし『SAW2』はすごく好き