『パラノーマル・アクティビティ』は失敗作

パラノーマル・アクティビティ』をDVDで鑑賞。居酒屋を三軒ハシゴし、後輩たちと部屋でワイワイ言いながら観た。

パラノーマル・アクティビティ [Blu-ray]

パラノーマル・アクティビティ [Blu-ray]

超低予算なのにメガヒット、すべて素人が撮影したというフェイクドキュメンタリー形式のホラーということで『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を彷彿とさせる作品。夜な夜な怪奇現象に悩まされるカップルが好奇心から寝てる間の映像を撮影しようと思いたち、それを実行に移す。ところがカメラを置いた夜からその怪奇現象はエスカレートしていく……というお話。

のっけから言うと失敗作だと思う。しかもそれが映画としても見せ物としてもだ。

まず『パラノーマル〜』は有名スターが使えない、スタッフが雇えない、部屋の中でしか撮影出来ないという低予算であることを逆手に取れてない。

どういうことかというと、『パラノーマル』はこの設定からは想像も出来ないほどにしっかりとした劇映画の構成になっている。それはホントにオーソドックス中のオーソドックスといってもいい。最初は音だけだった奇妙な怪奇現象が、だんだんエスカレートしていくというのも、「次に何が来るんだ!?」という観客の期待感を煽ってくれるし、ラストもそれにきっちり応える形で終わる。それは何も起きなかった(こそ怖かった)『ブレア・ウィッチ』と比べると一目瞭然である。

だが……それであれば、この設定である必要があるのか!?と感じてしまうのも事実。基本的に現実の延長線上にある撮り方なので、映画的な展開になった途端リアリティが欠如するのだ。

単純に演出の問題もあるんだろうが、映画的であればあるほど、フェイクドキュメンタリー形式が鼻について、恐怖という観点からいっても、映画として見てもかなり中途半端であることは否めない。部屋の中でしか起きないというのは良い設定だったと思うが、その家もあまりに普通で、それも引っかかる。夜中にギャーギャー騒いで、ドタバタしてたらご近所さんだって気になるはずであって、その閉鎖された空間が実はまったく閉鎖されてるわけではなかったというのも怖くなかった要因のひとつかもしれない。

一番の問題点は固定カメラの中でしか奇怪なことが起きてないということだ。

毎回毎回深夜三時の寝室で何かが起こるわけだが、それが全部固定カメラで、キャラクターたちから遠い。さらに部屋から出てしまうと、主人公たちに何が起きてるのか分からなくなるため、恐怖におののいてる主人公たちの姿を見ることが出来なくなり、観てるこっちも主人公と一緒に怖がれないのである。それであれば、みんなから総ツッコミを食らう覚悟で、恐怖におののく彼女をカメラを持って追うくらいのことはした方がよかったのではないかなと思う。せめて、彼女の身に何かが起きてる!という時こそ、手持ちカメラの臨場感を使うべきだったのではないだろうか。結構前になるが、さまぁ〜ず大喜利をやった時に「このホラー映画まったく怖くない、それはどうして?」というお題に対し、「怖いシーンが全部俯瞰」という回答をしていたが、それに近いもんがこの映画にはあった。

恐怖におののく主人公たちが映ってないと書いたが、そもそも主人公たちがまったく怖がってないのも致命的である。明らかに超常現象が起きているにもかかわらず、彼氏の方がそのことに興味津々で、彼女に「もうやめて!」と本気で言われるのに、「ねぇねぇ、これどうなってると思う?頼むから一緒に考えてくれよぉ」とノリノリなのだ。なんでこんな目にあってるのにカメラを回し続けるんだ!?という疑問点に対しては有効な設定だが、それが怖さとは結びつかないのである。

というわけで、わりかしオーソドックスな展開を見せるだけに、それが足かせとなってしまった『パラノーマル・アクティビティ』はホラー映画に慣れてない人たちにはおすすめだが、もうこの設定だったらいっそのこと、誰も周りに人がいないような山小屋で一泊!とかその方が怖いじゃんかと素直に思ったよ。んで、「もうこんなの嫌!」みたいな感じで山小屋から逃げ出しても、そこは森で、外も怖くて、それを手持ちカメラで彼氏が「待てよ!」とか言いながら追っかけてみたいな?こっちの方が絶対に怖いじゃん!でもそれだと『ブレア・ウィッチ〜』とほぼ一緒なんじゃないかって話も……

ちなみに監督はこれだけの映画を撮っておきながら、日本のホラーをまったく知らないらしく、映像特典のインタビューで「アメリカで公開された『リング』と『呪怨』は観たよぉ、ただオリジナルの方は観てないんだけどね!」と言っていた……せめてその辺は勉強した方がいいのではないかしら……あういぇ。