「ワンシチュエーション三人モノ」というジャンル『アリス・クリードの失踪』
『アリス・クリードの失踪』をレンタルDVDで鑑賞。
ムショ仲間であった二人の男が大富豪の娘を誘拐して身代金を要求するのだが……というのがあらすじ。これ以上は何も書けません!
ワンシチュエーションで登場人物が三人しかいないサスペンスということで『ライアー』や『テープ』など偉大な先人に挑戦状を叩き付けた感じになるのだが、これ以上でもこれ以下でもないというのが正直な感想。もちろんこの二本が天井近い完成度を誇ってるからこその間違いない作品であるのだが、いずれも共通するのは低予算であり、駆け引きと頭脳戦と予想外のサプライズによって物語が構築されているという点でインパクトには欠ける。良く言えば、このテンプレにそって作られた物語なので、その期待を裏切ることはないということ。確かに部屋がひとつで登場人物が三人しかいないとなると相当制限されるわけで、どうしても似たような感じになってしまう。
実行に移す場面がカットされていたり、誘拐がテーマだったり、さらに森の中で一触即発のシーンがあったりと、この手の作品のエポックメイキングである『レザボア・ドッグス』やコーエン兄弟の『ファーゴ』と『ミラーズ・クロッシング』に影響を受けたような感じ。シンプルな犯罪が、掛け違ったボタンのようにズレていき、最終的に観客に情報を先取りさせ、登場人物がすべてを把握しきれてないという意味では『ブラッド・シンプル』の現代版とも言える。こちらも主要の登場人物は三人だった。
この手の作品にしてはチャカチャカした編集やグリングリン動くカメラワークは皆無で意外と地に足のついた演出を見せる。特に始まってから10分間セリフが一切ないままジャンプカットを使いテンポよく物語が進んでいくのは緊張感を持たせながら映画の世界へと引きずりこむのにもってこいのイントロダクションだと言える。セリフによる説明が難しい作品ではあるが、ものすごく気を使っており、映画的なリアリティと本来の意味でのリアリティのバランスが絶妙だ。
こういう映画にはあえて大スターが低予算で出演して、自身の株を上げようというのが見え見えなのだが、『アリス・クリードの失踪』にはそれが皆無で、ちゃんと脚本にそって物語の緊張感を高めようというのが見られる。故に描写もなかなか過激であり、特にタイトルにもなってるアリス・クリード役を演じたジェマ・アータートンはボンドガールという当たり役をゲットしながらも今作でヌードになるだけでなく、生々しい濡れ場や尿瓶でおしっこをしたりバケツに脱糞しようとしたりと体当たりの演技を見せる。特に中盤おっぱいをさらけ出しながら見せるむき出しの演技は特筆すべきで、この作品を機にもっともっと活躍の場を広げて欲しいなぁと思う次第だ。
というわけで、この手のワンシチュエーションものの系譜にまたひとつおもしろい作品が生まれたという感じ。もし観ようと思っているならば、何の情報もいれず、もっと言えば、レンタルDVDの裏ジャケすらも見ずに鑑賞することをおすすめしたい。あういぇ。
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- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2012/01/27
- メディア: DVD
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