ネタバレあり!『インセプション』感想

ふだんこのブログでは映画の内容については全然踏み込まず、ネタバレなしでこの映画はこういう映画ですよぉってプレゼンする感じなんだけど『インセプション』については見終わった後にあーだこーだ言いたくなるので、今日は思いついたことを文脈関係なく書いてガンガンネタバレしていくぞこのやろー!



・主役の多いドラマ

インセプション』がおもしろいと思ったのは、描き方によってはメインキャラクターたちが主役になりえるなぁというところ。例えば、デカプリオのキャラクターってのは、個人的には脇役っぽいと思っていて。夢の中で列車がドーン!とか、潜在意識の中の妻が出て来てドーン!なんてのは、あえて、デカプリオが出してるというのを隠せばトリックになると思うし、そもそも精神的にあれだけ不安定のヤツがチームのリーダーというのも、もし誰かの視点で物語を語り直せば、それはそれでミッションがホントに成功するのだろうか?という良いスパイスになる気もする。

というか、普通こういう映画をやる場合主役になるのはエレン・ペイジのキャラクターだと思う。ビジュアルもすれてない感じなので、普通に学生として暮らしてきたエレン・ペイジが急にデカプーに呼び出され、「君は夢の設計士としての才能があるな」と言われて、その才能を開花させ、ミッションに挑むという設定でも悪くなかろう。夢の中で設計するというのは難しく、修行に修行を重ね、最終的に街を折り曲げたり出来るようになるなんていう展開でもおもしろいと思う。開花させたと同時にデカプーの過去も気になり始め、与えられたミッションをクリアすると同時に不安定な彼を救い出そうとする物語にすれば、それはそれでハイコンセプトだったりするだろう。というか、それやると『マトリックス』になっちまうのか。

あと、ダマされる社長の息子が主役でも問題ないと思う。「カットが変わると夢になる」というのがとてもおもしろく使われているので、ある日自分の過ごして来た日々がぶつぎれてつながらず、それは夢であることをデカプーに知らされて、彼について行くと、潜在意識の中で病床にいる父に逢い、彼は救われるのだが、実はそれも夢の中の夢で……なんてのは家族愛と見せかけてホラーっぽくなっておもしろいかもしれない。


・分からないところも……

インセプション』は確かにド級の映画だった。ただ、あとから考えると、その複雑過ぎる設定のせいで、ん?と思ってしまうところも……と言ってもうろ覚えのところもあるので、その辺はもう一度観に行きたいと思ってる。

特に分からなかったのは、普段は死んだら現実に戻るという設定なのに、強い鎮静剤を打ったことで、今回は死んでも戻れません。むしろ虚無の底に落ちますというところ。あれって浅い層で死にかけて、死ぬ前に次の層に潜ったから、死ぬまでの時間と夢の間でタイムラグが生じて、そのせいで死の世界を観てしまう時間が長過ぎるから廃人になるという解釈でいいのだろうか。というか、そもそもあれだけ寝たら現実で寝れるのかって話も。それだけで精神は不安定なんじゃないのか……

あとやっぱり“キック”の概念。車が横転して無重力になるという仕掛けはよく分かるのだけれど、さすがにあそこまでの衝撃受けたら起きてしまう気が……ただ、キックのタイミングをタイムラグの中で合わせるというのはとても楽しかった。



・結局どういう映画だったのか?

ぼくは、この映画は大企業の息子が植え付けをされたことで救われたのと反対に、デカプリオが「こんな見せかけだけの救いなんて救いでもなんでもねぇよ!妻をプロジェクションしたって現実では生きてねぇじゃん!」ってことに気づき、一念発起して現実に立ち向かって行く物語だと思っていて、故にコマがぐらつくというのは「現実」を示唆してるという解釈なのだけれど(というか、ノーランの映画は基本的にウジウジしてんじゃねぇ!現実を見ろ!というテーマを踏襲していることが多い)、ぐらつくところで終わるのは完全に監督が「どうとでもとれや」と確信的にやってることだと思う。『告白』の「なんてね」と一緒で。

まぁ、だから妻と別居中とか、別れた元カノに対して未練タラタラな男の人にとっては救われるような映画になるんじゃないだろうか。別れてから楽しかった日々を妄想するんだけど、でも思い出の中の彼女と現実は違う!いつまでもウジウジしてらんねー!っていう精神状態と一緒な気がする。デカプー。


・この映画は好きなのか?嫌いなのか?

確かにもう一度観たくなるような魅力に溢れている作品だが、この映画を好きかと聞かれてると結構困る。才気に満ちあふれ、確信的に賛否両論になるように仕掛けてるきらいもあり、だからと言って映画は難解ではなくとってもエンタメしている。ただ、なんだろう、このノーランのドヤ顔な感じ(笑)まだ『メメント』の時は控えめだったんだが、なんか『ダークナイト』くらいから、ドヤ顔を感じるようになった。ものすごい華麗なフリーキックを決めた後のC・ロナウド的な感じと言えば伝わるだろうか。まぁ、それはぼくが勝手に思ってることなんだけども。

それにしてもモテそうだな!おい!

映画ガリ勉というか、ソダーバーグのような映画インテリ感が漂ってるのがちょっと……いや、映画はおもしろかったんですよ!素晴らしかったんですよ!ディ・モールト素晴らしかったんですよ!ただ、なんかくそう、いけすかねぇなぁ……僻みです。ひがみ。あういぇ。



関連エントリ(ネタバレ系)

http://d.hatena.ne.jp/tianbale-battle/20100719#1279571573

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