『シュレック』への返答『プリンセスと魔法のキス』

プリンセスと魔法のキス』をDVDにて鑑賞。ホントはBDで観たかった。

ごめんなさい。正直、そのタイトルやらなんやらで小バカにしてました。なので当然スルーしてました。でも、今年はアニメ作品がすごくクオリティ高かったし、有名なブロガーの方々が絶賛してたのでなんとなくレンタルして観てみたんですよ。そしたら……これがとてつもない作品で驚きました!かなりの良作でした!

いろんなところで指摘されてるように、お姫様/プリンセスのお話を現代アメリカに近い時代設定で描いたのが革新的で、「カエルに変えられてしまった王子様がお姫様のキスで人間に戻る」という例の話を絡めつつ、それを逆手に取ってさらに三回転半くらい捻った脚本がとにかく素晴らしい。ニューオーリンズを舞台にしたため音楽がディキシーランドとか言われてた時代のマーチングバンドジャズで彩られてるところも非常に特徴的。とにかくその舞台や時代設定も含め、今まで散々おとぎ話としてのプリンセス物語を描いてきたディズニーが、いよいよまんをじしてアメリカを舞台にアメリカ人のためのプリンセス物語を描いたというところに感動を覚える。

しかも手書きアニメの美しさ、色彩の鮮やかさをあえて誇張して描いてるような映像設計がバツグンで、絵が、アニメが、色彩が踊ってるという感覚で言えば、ジャズで作り上げた『ファンタジア』という称号を与えてもいいくらいの感動である。

こっちの想像をことごとく覆していく展開になるので、あまりストーリーについて言及出来ないのだが、なんといってもこの作品がおもしろいのは、現代アメリカを舞台にしてプリンセス物語を描くにはどうしたらいいのかということを突き詰めているところだ。

「白馬に乗った王子様」というファンタジックな幻想を生み出し、その夢は叶うよということを『シンデレラ』で具現化してきたディズニーだったが、今作ではそれにある種の免罪符を打ち、新たな高みへとのぼっていく。世界的な恐慌だった時代を舞台にし、さらに黒人を主人公にすることで、今まで以上に境遇は現代的で最悪の状況にしている。今までの展開であればここから白馬に乗った王子様を夢見てすごし、王子様に気に入られて、ライバルの妨害を受けながらも、主人公が選ばれるという展開になるだろう(っていうか、それシンデレラじゃねぇか!)。ところが今作での王子様はろくでもないクズ人間であり、どうしようもない女ったらしで金無し、自分が遊びたい放題遊ぶために金持ちと結婚しようとしてるダメ男なのだ。夢物語を丸くおさめるためのファクターである王子様ですらこの有様なのである。

あえてこの状況にした脚本の中で、主人公はいったいどのようにして、どのような幸せを掴むのか?というのがキーポイントになっていくわけだが、最終的に今作は幸せというのは見方によって人それぞれ違うんだよということを優しく諭してくれるのだ。その決着のつけ方も含めて『シュレック』への返答だなと個人的には感じた。

というわけで、ホントに白馬に乗った王子様が迎えに来るのを待ってるクソバカ女全員に見せてやりたくなるくらいの作品。バカヤロー!白馬に乗った王子様と結ばれるのが幸せだと思うな!幸せってのはな!――――とそれを説明すると映画のネタバレになってしまうから困り者なのだなぁ、とにかくディズニーでしょ!?なんて思ってる人に是非おすすめ!ホタルと星空に泣け!!サントラも欲しい!あういぇ。

プリンセスと魔法のキス ブルーレイ(本編DVD付) [Blu-ray]

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