やがてDVDも消えていく、雨の中の涙のように…

最近、狂ったように「DVD」を買い漁ってました。

一時棚に収まらなくなって、ブルーレイ出たら買い替えようと思ったもんや観なくなったヤツを70本くらい売っぱらったんですが、売った後にやっぱりものすごく後悔しましてね。『ワイルドバンチ』なんてなかなか日本語版出ないし、あとブルーレイで観てもそんなにキレイじゃないヤツもあったりして、これならとりあえずDVDでいいやって感じで買い直しています。

なんでそんなに買えるかっていうと、安いんですよ。まぁとにかく安い。ビデオからDVDに移行する際、レンタル落ちの中古ビデオがアホみたいな値段で売ってたときがありましたが、その現象に近いものがなんとセル盤でも起きてるんですねぇ。さらに売ったヤツを買い直すだけじゃ飽き足らず、昔欲しかったけど泣く泣く諦めたものまで買うようになってしまいました。

スパイダーマン』の1と2は250円でそれぞれ買ったし、『マトリックス』に至っては2と3が105円ですからね。『マーズ・アタック』も300円で買い直しました。『普通じゃない』っていうぼくの大大大好きな映画があるんですが、これも500円で無事に買い直すことが出来ました。『トゥモロー・ワールド』はブルーレイを持ってるんですが、US盤なんで日本語字幕が付いておらず、DVDを買い直しました。それでも750円なんだから驚きです。ピージャク版の『キング・コング』は2枚組のボックスセットをネットで260円で見つけたんで、それを買いました。『エクソシスト』もパッケージがかっこいい2枚組ボックスを250円で買い………

ぼくがDVDの存在を知ったのはビデオでーたーという雑誌でした。当時大好きだった作品『マーズ・アタック』が高画質高音質で楽しめる!みたいな特集記事だったと記憶してますが、当時から映画が大好きだったぼくにとってその記事は衝撃的で、これを見てから無性にDVDというものが欲しくなりましたが、当時中学生くらいだったぼくにとってデッキが10万円というのは100万円以上の感覚だったので、絶対に手が出ない夢のものという感じがありました。

やがて時は流れ、バイトで金を貯め、DVDプレイヤーを買う日がやってきます。SONYホームシアターセット。中古で6万円。なんと免許も当然持ってなかったぼくはこのセットをなんと自転車に乗せてよろよろと帰ったのでありました。

初めて買ったソフトはゴダールの『女と男のいる舗道』とシュワちゃんの『イレイザー』という無茶苦茶な組み合わせ。セッティングが完了したときにはあの夢のマシンが部屋にある……と非常に感慨深いものがありました。いざソフトを入れて観たら、ビデオとは比較にならないくらいの画質の鮮明度に腰ぬかしましたよ。あと今では当たり前の感覚ですけど、ビデオじゃないんで、観終わっても巻き戻さなくていいのか!という感動もありました。しかもチャプターが付いていて、好きなところから観れる……映画好きにとっては至れり尽くせりですよ!なんてすごい機械なんだ!

さらにすごかったのが『イレイザー』ですよ!5.1!これで初めて観た時はぶっ魂消ましたね!後ろからヘリコプターの音や雨が降ってる音がして、爆発したらサブウーファーから地響きが鳴るんですよ!しかもこれ部屋なんだよ!自分の部屋!DVDはホントにすごい!

ぼくはDVDのトリコになってしまいました。そしてDVDなんて絶対に普及しないと思ってました。レンタルも絶対にされないだろうと思い、石丸電機に通いつめ、ガンガン買いました。とにかくぼくにとってDVDというのは革命的な夢のメディアでした。駅前までチャリをすっ飛ばしてDVDを買って帰ってきて部屋を暗くして爆音で観るというのはちょっと神聖な行為というか、映画館で観る時とは別な、なんか特別な感じでした。

ところが10年くらい経つと、過去高額だったDVDは廉価版として誰でも買える値段にまで下がりました。レンタル屋はほとんどDVDになり、旧作のDVDは二週間80円という安さで借りられ、あげくの果てにブルーレイなるものまで登場し、どんどんDVDの価値は下がって安くなっていきました。もっと言うとそのブルーレイですら、定価で1500円で売られていて、さらにブルーレイの次のメディアがもう控えてるというではありませんか。

こんだけ語っておきながら、哀しいことにぼくはDVDに対する思い入れがどんどん薄れています。最初はブルーレイが出た時も「DVDで充分だよ!誰が買うか!」とか思って、ブルーレイを一足先に買った友人に対しても「けっ!こちとらDVDの初期から買ってんだよ!」と思っていました。ところが人間というのは残酷なものですね。やはり音や映像が数段キレイなブルーレイはやっぱりDVDとは比べ物にならないくらいすごい。そのすごさたるや言葉では説明出来ません。DVDを買い漁ってはいますが、これだって、ブルーレイに買い替えないヤツ用として今は買ってるわけで、安くなければ絶対に買ってません。なんて薄情なヤツなんだ!

でも、ブルーレイも中古ショップで500円で売られてしまう時代も来るのかな………そう考えるとまた哀しくなるが……しかたないのかな……

オレはお前たちの想像もつかないものを買って来た。16000円のCDサイズのジャームッシュボックス、7000円の完全限定生産の『ファイト・クラブ』、そんなDVDもやがて消えていく……雨の中の涙のように……