『サマーウォーズ』を観てから二年が経ったのだが……
昨日、日テレで『サマーウォーズ』が放映された。
一般層からもアニメ好きからも映画好きからも認知されている超特大ヒット作である。観客動員数は123万人。結構値がはるDVDやブルーレイも5万枚以上のヒット、さらにテレビで放映されれば13%という数字を記録*1。まさに近年のモンスターアニメの一本であるといえよう。
その認知度ゆえに、映画好きではない人と映画の話をする際、とっかかりとしてこの作品の話をすることが多い。そう言った意味では「ジブリのなかでどれが一番好き?」と同じくらい使い勝手がいい作品ともいえる。実際、ホントに周りでも観ている人が多いのだ。
だが、正直、ぼくにとって『サマーウォーズ』は非常に複雑なポジションの作品である。
UK盤でブルーレイを所持しており*2、都合4回くらいは見返している。細田守監督作品の中ではダントツの鑑賞回数だ。もちろんこれからも何回か観るんだろう。そのためのブルーレイ購入である。ふとしたときに観たくなり、なんども読みこんだ本を適当にひらいて、そのページだけ読むみたいな感じで、適当にチャプターを操作して、ひとつのシーンだけを数分観てやめるなんてこともするくらいで、『燃えよドラゴン』ならブルース・リーが出てくるシーンを、『ダークナイト』ならばジョーカーが出てくるシーンだけを見返すというのはあるが、全体的にそういう風に拾い読み的な見方をする作品はぼくの中ではそうはない。
じゃあ『サマーウォーズ』が好きなのか?と聞かれると、奥歯に物がはさまってしまう。腕を組み、苦虫を噛み潰したような顔になり、さんざ熟考したあげく「好きかといわれたら好きじゃないかもしれないけど、そこまで嫌悪もせず、むしろ何度も観たくなる魅力があるが、だからと言って作品の出来が決していいわけではない、イラつきを覚えるシーンも多々ある」と答えるだろう。
ハッキリいって『サマーウォーズ』は細田守監督作品の中でいちばん出来は悪いと思う。
作品の感想に関しては前に書いたので、手短に済ませるが、例えるなら絶好の天気でタープを張ってBBQをしてたら、突然雨が降って、その後にすぐ晴れて、また降ってが繰り返され、今日のBBQ楽しかった?と聞かれるとうーん……ある意味で楽しかったんだけどさ……と言ってしまうような感じである。
現に同じプロットの『ウォーゲーム』は2000年問題という現実を下敷きにしているので、物語に入り込みやすく、さらに主人公たちが戦う理由が明確であり、全世界の危機感みたいなものがしっかり感じられる素晴らしい作品であった。逆に「デジモン」という足かせを最大限に利用したストーリーだなとも思ったくらいだ。
じゃあ『ウォーゲーム』をそこまで何回も観たいか?と聞かれれば答えは「NO」だ。もちろんその逆もまたしかりだろうが、ぼくにとって『ウォーゲーム』はいっかい見れば充分な作品である。
『サマーウォーズ』が好きな人に見られる共通点は『時をかける少女』をそこまで推してないということ。あの作品にはノレなかったが『サマーウォーズ』は大好きという人も多いのではないだろうか。実際ぼくの周りはほとんどそうである。
ぼくは『時をかける少女』に大感動したクチなので『サマーウォーズ』と、どちらが好きかと聞かれれば『時をかける少女』のほうが断然良いよ!と瞬時に答えるだろう……いや、瞬時に答える。
が、『時をかける少女』はブルーレイはおろか、DVDも持っておらず、もう一度観たいか?と言われると、そこまでのテンションにはならないのだ。それでも二度は観たが。
ぼくは『ワンピース』の『オマツリ男爵』が細田守監督の最高傑作だと思ってる。これこそが細田守の真骨頂であり、多面的な魅力があり、一言では語り尽くせない素晴らしい作品だ。もし喰わず嫌いしている人がいるなら、間違いなく観ることをおすすめする。
だが、これまた何度も観たいなとは思わないのである。何故なのだろうか。
村上春樹はチャンドラーの『リトル・シスター』を失敗作として、作品の欠点もあげつらえながら、それでもなおかつ「愛おしい作品」だと3冊目の新訳にこれを選んだ。たしかにこの作品はそれまでのチャンドラー作品にくらべるとプロットは無茶苦茶、つじつまもあわず、何がやりたいのか分からない部分も多々ある。そもそも翻訳者が犯人が誰だかよくわかってないと答えてる時点で、どれだけハチャメチャかなのかは想像つくであろう。
しかし、そのハチャメチャなバランス、破綻しかかったプロットを打ち消すような愛おしい名場面も多々あり、確かに『リトル・シスター』を「愛おしい」と表現したのもよく分かる。新訳ではこれがベストで、恐らく再読するとしたら、この作品からまた読むことになるだろう。
つまりぼくにとって『サマーウォーズ』はそういう作品なのである。が、しかし、『リトル・シスター』のそれとは違い、やっぱりぼくは『サマーウォーズ』を素直に好きといえないのだった。うーむ。
ちなみに先ほど例に出した村上春樹だが、ぼくは彼の小説の中で(『アフターダーク』以降は未読)、一番好きなのは『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』である。しかし一番読み返しているのは『ノルウェイの森』だ。じゃあ『ノルウェイの森』が好きなのかと聞かれるとやっぱりおなじように奥歯に物がはさまってしまう………
堂々巡りになるのでもうやめます。みなさんにもそういう微妙なポジションの作品ってありますか?
関連エントリ
2000年問題に立ち向かう少年たち『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』 - くりごはんが嫌い
この絶望は監督自身が受けたものなのか?『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』 - くりごはんが嫌い
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