Amazing!!!!『スコット・ピルグリムVS.ザ・ワールド』
『スコット・ピルグリムVS.ザ・ワールド』をUK盤BDにて鑑賞。なぜか監督作がすんなり日本で公開されないエドガー・ライト監督最新作。
今作も日本での公開が危ぶまれたが、つい先日公開が決定した。邦題は残念ながら『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』というへなちょこ極まりないものになってしまったが、ひとまずここは公開が決まったことを喜ぼうではないか!同士たちよ!
ストーリーは至ってシンプル。バンドをやっていてさらに中国系女子高生の彼女がいるボンクラリア充スコット・ピルグリムくんがラモーナ・フラワーズという女の子に恋をした。うまくデートにこぎ着け、勢いでベッドイン!自身のバンドが出場するコンテストでラモーナと彼女がはちあわせるというピンチを乗り越えたのもつかの間、今度は空から邪悪な元カレが飛んでくる!(なぜだ…)どうやらラモーナと付き合うには彼を倒さなければならないという掟が…さらにラモーナから他にも7人の元カレがいることを聞かされ、次から次に襲いかかって来る邪悪な元カレたち。はたしてスコットくんは彼らを倒し、無事にラモーナをゲット出来るのか………
話は無茶苦茶だが抱きしめたくなるくらい大好き!!こんな映画が観たかった!こんな映画を待っていた!と声を大にして言いたい。ファミコン、格闘ゲーム、マンガ、アニメ、ロックンロールのごった煮。それをラブコメ、カンフー、ミュージカル、チャンバラで味付け。『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『ホット・ファズ』が『レザボア・ドッグス』『パルプ・フィクション』ならば、『スコット・ピルグリムVS.ザ・ワールド』はエドガー・ライトにとっての『キル・ビル』であり、ハイでポップな『ナポレオン・ダイナマイト(aka.バス男)』でもある。
映画が始まった瞬間、ユニヴァーサルのマークがドット絵で表現され、さらにテーマソングがピコピコ音になってる時点で「この映画はファミコンみたいに出来ています」という刻印が押される。セリフも「何やってるの?」「ゼルダだよ」「ファイナルファンタジーIIが弾けるようになったんだ」などそのまんま固有名詞が飛び出し、さらに主人公のスコットくんは女の子と話す時に必ず『パックマン』に関するしょーもないうんちくを披露するという設定だ。その後も映画はビデオゲームと呼ばれるものに必ず出て来るような表現――――スコアからコンボ、レベルアップ、コンティニュー、1UP、ライフゲージ、コインなどなどを実写映像にこれでもか!と組み込んでいく。一体どこで何が飛び出すのかというのが作品のキモなので、それは観てからのお楽しみだが、さらにまるまる引用されるのは『ゼルダの伝説』、『ドンキーコング』、『スマッシュブラザーズ』などの任天堂作品から、『MARVEL VS. CAPCOM』、『鉄拳』、『ソウル・キャリバー』などの格闘ゲーム、他にも『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』や『DDR』など枚挙にいとまがない(他は「〜っぽい」だけで、どっちかというとゲームにおけるクリシェというか、常套句な感じ)。
スコットくんが得意とするアーケードゲーム。その名も『Ninja Ninja Revolution』!当然ながらそんなゲームは存在しない。
それだけでなく『フリクリ』よろしくの要所要所で出て来るマンガ的表現も忘れてはいけない――――いや待て、マンガっぽいと言えばジム・キャリーの『マスク』があったじゃないか!と思ったが、あれは目玉が飛び出したり、高いところから落ちたらペラペラになったり、ビックリしたら心臓が飛び出したりするという、まったく違うベクトルのものなのであった。『スコット・ピルグリム』では、そう言ったマンガの中に出て来るキャラクターがやりそうなことではなく、ホントにMANGAそのものがそのまんま実写に移し替えられているのである。コマ割りがそのまんまひとつの映像の中に出て来たり、オノマトペがそこかしこに飛び出したり、勢いのあるシーンでは集中線がビビビビビーっと出て来たりする。しかもそれがいちいち仰々しく登場するので、なんてことないシーン――――例えば電話が鳴ったりするようなシーンですらMANGAになっているので、いちいちそれで笑わせてくれるし、飽きさせない。
映像は全編にわたってこれでもか!と無茶苦茶な仕掛けが満載だが、意外とドラマパートはかなり丁寧に作ってあって、ホロリとくるところも随所に出て来る。その辺の緩急に付いて来れるかが評価の別れ目になりそうだが、故に万人にはすすめられないというのが唯一の弱点でもある。得意技であるトニー・スコットのようなMTV調の編集は封印されてたりして、スピード感も重視されておらず、エドガー・ライトの前二作とはまるでアプローチが違うのでそのファンにもあまり強くおすすめ出来ないかもしれない。
まぁ、とにかく主人公に襲いかかる元カレを倒すだけという映画だが、映像と音楽の力でグイグイ見せ切るハイパーでゴージャスでアメイジングなフルスロットルムービー。間違いなくカルト的な人気になること必至。かなり早いがぼくの今年のベストワンはこれで決まりだろう。ファミコン世代は絶対に必見。あういぇ。
基本的にこのブログでは予告編とか張り付けないけど、日本ではまだ公開されてないので、とりあえずこちらを観ていただければイメージが掴めるかと。
サントラも最高!特にT-REXの『Teenage Dream』とBeachwood Sparksの『By Your Side』が素晴らしい!
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