演出はヘタだけどその姿勢はかいたい『GANTZ』

GANTZ』鑑賞。ものすごくヒットしているようで。

地下鉄の路線に落ちた酔っぱらいを助けようとして、電車に轢かれてしまった玄野計と幼なじみの加藤勝は、気付いたら得体の知れない部屋に居た。そこには二人の他に数人の人間と不気味な黒い球体。ここは天国なのか、それとも生き返ったのか、よく分からないまま黒い球体に謎の星人を倒せと命じられ、二人は理解不能な戦いに巻き込まれていくというのがあらすじ。

原作は言わずとしれたあの『GANTZ』で、ハッキリ言うと映画としてはほんっとにダメダメなんだけど、楽しめた。個人的には『リアル鬼ごっこ』や『リターナー』のラインで、こういう映画なら例えヘタクソでも応援したくなってしまう性分なのだ。つーか、もういぬがどうしたとか、妻が余命いくばくもない映画とか見たくないんじゃ!ファック!それでもさすがに二時間越えのランタイムで二部作というのはどうかと思ったが……

残念ながら日常のシーンのテンポやアクションに行くまでの説明部分が悪く、もうちょっと大胆に刈り込んでもよかったと思うが基本的にはGANTZの世界観は継承されている。映像のトーンは暗く、着ているガンツスーツが真っ黒ということもあって、時折何が起こってるのか良く分からないくらい暗い。エロやグロ描写を控えめにするという触れ込みだったので暗くして残虐な要素を薄めようという効果なのかと思ったが、それにしては『第9地区』よろしく、派手に舞い散る星人の破壊描写はなかなか強烈で、殺風景な日本の住宅地と相まって奇怪な絵作りに成功している。キメ絵がバシバシ登場する原作に比べると映画にはそれがひとつもなく、ザック・スナイダーが監督した方がよかったんじゃないのかと一瞬思ってしまったが、クソでかい大仏との一騎打ちはかっこいいカットが連発されてそれを払拭してくれるし、ニノの切株やド派手な爆破シーン、ワイヤーワーク、女の子の裸など見所は多い。さらにちょーゴージャスな音楽が鳴るなぁと思ったらなんとスコアは川井憲次が担当、バトルシーンを派手に盛り上げてくれる。

役者陣はかなり頑張っていたものの、セリフまわしや演出プランに若干の違和感があり、いちいち日常生活では絶対にしないような仕草が出て来てそれがすごく鼻に付いた。あの松山ケンイチでさえ「あれ?こんなんだったっけ?」と違和感を感じたほどだったからなおさらだろう。さらに原作は人が虫けら以下と言わんばかりに死んでいくのに対し、映画では人の死でながーく立ち止まってしまうところがあり、わざわざ死ぬ時に仰々しい音楽が流れ、その間は敵が一切攻撃して来ないというお決まりのアレが出て来る。頼むからそういうのやめてくれ!なんか気持ち悪いんだよ!

役者に対する演出はガタガタだが、それでも二宮和也は完璧。演技に対する勘がいいのだろうか。玄野を彼が演じると聞いたとき、個人的にはすげぇ合ってるかもと思ったが、見事にその期待に応えた形となった。

というわけで、映画としてへったくそなので、絶対に必見!というわけではないが、「なんか映画観ようよぉ」とか彼女に言われて、いぬのえいがとか観たくないなぁと思ってるボンクラならちょーどいいのではないだろうか、ニノと松ケンとトリスのハイボール出てるし。

ちなみにマンガの『GANTZ』は今いちばんおもしろいところなので絶対必読!みんな10巻で辞めたとか、10巻以降はわけわからんとか言ってるけど、ホントに今すんごいよ!特に27、28、29巻はマンガとはここまで行けるものなのかという領域にまで達してるよ!『SLAM DUNK』で言えば山王戦だよ!

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死ぬまでにしたい1のこと『GANTZ』 - いずむうびい

基本的にみんな同じようなテンション。

あ、あとエンドクレジットで知ったのだが、プロット協力は『ドッペルゲンガー』の脚本を担当した古澤健監督*1。最新作『メイキング・オブ・ラブ』は絶賛DVD発売中です。あういぇ。

*1:ふるにゃんでおなじみ