もし高校野球の女子マネージャーが前田敦子じゃなくて峯岸みなみだったら

前回の続き――――というよりは「『キッドA』を作ってたら、思いのほか曲が出来過ぎてしまったので『アムニージアック』にしました」的な姉妹エントリだと思ってください。

もしドラ』と言えば、言わずと知れた大ベストセラーだが、この作品を映画化をするというアナウンスがあった際、主演が前田敦子でさらに峯岸みなみが脇役に回ると知って愕然とした。

何故かというと、元々この原作は峯岸みなみをモデルにして書かれたものなので、その本人が演じるのがベストに決まっているのに、わざわざネームバリューを優先して、前田敦子を主演に据えたからである。


ある意味で「みなみ」と「みなみ」な二人。

そりゃマーケティングとかいろいろあるだろうけど、いくらなんでもそりゃないっしょ!峯岸みなみに当て書きしたのに、その役者使わないってどういうことだ!――――とまぁ、その時点でまともに「映画」を作ろうという気がさらさらないことがわかるのだ。

そんなに憤慨してるのに、なんでわざわざ観に行ったのかと言うと、やはりみぃちゃんをデッカイスクリーンで観るのはこれが最後になるかもしれないという危惧があったからである。

お願いだからガチャピンとかヨーダとか言わないでちょーだい!!あ〜ちゃんをゴリラって言ってるのと一緒だぞ!胸が痛まないのか!?オレはみぃちゃんが好きなんだよ!つっても4推しくらいだけど!

んで、観に行った結果どうだったかというと、とてもおもしろい現象が起きていた。

主演の前田敦子よりも、脇役である峯岸みなみの方が幾分輝いていたからだ。

物語がどうこうというのは前回のエントリで指摘した通りだが、『天使の恋』という映画を観ればわかるように、物語とは関係なく、主人公がどれだけかわいいかというのがあればこの手の映画は成功だと思う。ちなみにそのせいでぼくは『天使の恋』を5回も観てしまったほどだし、『セーラー服と機関銃』だって、そういうことなのではないだろうか。

ところがこの作品は前田敦子の魅力を引き出してるとは到底思えない。

まずカメラは前田敦子を正面からではなく、ひたすら斜めから捉えるのだ。画像検索すれば分かるが、やたらと斜めを向いているカットしか現れない。これは正面を向いた顔がスクリーンに耐えられないという監督の判断なのだろうか?

やたらと斜めなチャンアツ。

野球が嫌いで、野球をやっていたことにより、からかわれたことがあると設定で、基本的に主人公はあまり楽しそうにしておらず、悲しいシーンでも泣くことはなく、冒頭で悔し泣きするのだが、それもまったく映さないという徹底ぶり。なので映画の中で飛び切りの笑顔もなければ、泣きじゃくる様子もなく、前田敦子の喜怒哀楽が極端に抑えつけられてしまっているのだ。もちろんゼロとは言わないが、あまりにも無表情なところが多い。

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どうせなら、こういう表情を引き出すくらいはしていただきたい。こんなに眉間に顔を寄せてもかわいいのはあっちゃんだけ!


あんまりやりすぎるとこうなってしまいます。

だが!『もしドラ』は、前田敦子の魅力を押さえつけたがために、本来主役になるはずだった女の子/峯岸みなみが脇で異様に輝いているという、世にも奇妙な文脈を持った作品になっている。逆に言えばみぃちゃん推しは涙を流して喜ぶかもしれないのだ!

もしかしたら全国でまことしやかに囁かれていた「なんでみぃちゃんが主演じゃねぇんだよ!」という声に監督は突き動かされたのかもしれない。監督はもしや俗にいう「前田アンチ」の「みぃちゃん推し」なのでは……なんて邪推もしてしまうくらいである。

とにかくこの作品でのみぃちゃんは泣いて、はしゃいで、わめいて、作戦を考えて、練習にも付き合って、しまいにゃ暴走する前田敦子を説得して……と八面六臂の大活躍。

その間、あっちゃんは何をしているかというと……何もしていない!お見舞いに何度か顔を出すくらいであり、最終的には部員のことを見捨てようとするのだ!!

んで、まぁ、いろいろあって、終盤で全速力で走り出すみぃちゃんが映し出されるわけなのだが……

これがこの映画のクライマックス!!

ぼくはこれに『汚れた血』のジュリエット・ビノシュを見たね!

カメラがそこまで激しく動かない省エネな画作りなんだけど、このシーンだけ、ドリー使ってトラックバックしてるくらいだからね!

というわけで、この作品は結局のところ「もし高校野球の女子マネージャーが前田敦子ではなく峯岸みなみだったら」というのをそのまんま体現したような映画であり、監督がマーケティングなど、AKB関連でヒットさせてやろうという金もうけ主義に少しばかり歯向かってみた結果、元々主役になるはずだった峯岸みなみが異様な輝きを持ってしまった作品になったのである――――というのはさすがに深読みしすぎだろうか。

まぁ、とりあえず近いうちにTBSかなんかでやるはずなので、その時にみぃちゃん推しはテレビの前に集合し、横目でスマフォをいじくりながら、ハッシュタグを使って、わちゃわちゃ盛り上がることをおすすめしたい。そういうやすーい、何かをしながらテレビで観る分には申し分ないような、どーでもいい映画だった。だってあらすじをぜーんぶセリフで説明すんだもん。

完。

*1:画像はどっかのオークションのヤツを引っ張って来ました。