他人の髪の毛を付けるって気持ち悪くね?『エクステ』

『エクステ』をレンタルDVDで鑑賞。最近ハマっている園子温監督の作品。

スタイリストを目指す栗山千明の元に、血のつながってない姉の子供/女の子が転がり込んで来る。姉はフーテンを絵に書いたような女であり、新しい男との生活に子供が邪魔になってしまったことで、その子を栗山千明に押し付けたのだ。当初は一日だけという約束であったが、その子供が虐待を受けていることを知ると、栗山千明は彼女と暮らすことを決意する。互いが互いを想い、彼女たちは親子以上の絆で結ばれていくのだが、その彼女たちを怨念のこもったエクステが襲うというのがあらすじ。

栗山千明のパートと、執拗に髪の毛にこだわる大杉蓮のパートがカットバックで平行して描かれて行くが、三池崇史の『オーディション』のように、それらはまったく真逆のテイストで描かれる。栗山千明の日常のパートはそれ一本でもドラマとして成立するほどで、ここを丹念に描くことで、この日常をあのエクステが襲うのか!というサスペンスにもなっている。一方で大杉蓮のパートはパンチが効いており、映像のトーンはやや暗く、粒子ががっているところもあって雰囲気がある。これぞ怪演と呼ばずしてなんと呼ぶという大杉蓮のオーバーアクトがその映像のトーンとマッチし、独自の怖さを生んでいる。

冒頭、栗山千明が自身の成り立ちや設定などを説明的なセリフで一気にばーっと喋り、そこで面食らうのだが、なんと、彼女の中で「説明的なセリフを喋るのがブーム」という設定にしているので、まったく違和感がないという園監督の強引な手腕に脱帽!!というかこれ一回こっきりの飛び道具のような気もする……あと、髪の毛の美しさで有名な栗山千明だが、彼女をキャスティングすることで、大杉蓮が「いやぁ、キレイな髪の毛ですねぇ」というセリフに説得力が出た。そのためだけのキャスティングだとしたら、プロデューサーも含め、監督も鬼だな。

元々「ファッションのためとはいえ、他人の髪の毛を付けるのって気持ち悪くね?」という発想からスタートしているが、それとはかけ離れた映像が展開されていき、最終的には大暴走するあたりは園監督っぽい。監督自身が言ってるように基本的にエンターテインメントを目指しているので、映画自体は至って普通の作り。ガタガタで歪なカメラワークが主体だった『紀子の食卓』に比べると緩やかに流れて行き、低い画角でウエルメイドな画作りを心がけてるようにも思えた。

というわけで、『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』とはまったく違うテイストの『エクステ』だが、よく考えれば、園子温監督は『時効警察』なんかも演出しているので、元々ウエルメイドなドラマは得意分野なのかもしれない。そう言った意味でもおすすめ。あと、大杉蓮の歌が耳から離れません!あういぇ。

エクステ【DVD】

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