ビリー隊長やハル・ベリーも出ていた『ラスト・ボーイスカウト』

『ラスト・ボーイスカウト』をDVDで久しぶりに観た。

こないだ職場の後輩に「ブルース・ウィリスが出た作品で何が一番好きか?」と訪ねられ、とっさに『ラスト・ボーイスカウト』と答えてしまったのだが、答えた後に「ヘリコプターの上に人が落ちて粉々になるシーン」しか覚えておらず、そもそもそのシーンが『ラスト・ボーイスカウト』であったのかどうかもうろ覚えマックスだったので、ホントに好きなのかどうか込みで確認するために、改めて観ようと借りて来たのであった。なんかスタジアムでどうしたとか、フットボールのなにがしというのは覚えているが、実際ブルース・ウィリスがこの時代に出ていた映画の区別がよく付いておらず、基本的に身なりの汚いブルース・ウィリスが出てればOKみたいなところもあるのである。

大統領の命を救ったこともある元・凄腕シークレットサービスが主人公。彼は女に対して暴力を振るうことを性癖としてもってる議員を殴ったことでクビになり、しがない私立探偵として働いていた。彼の仲間であるマイクから高額の仕事を譲り受けるところから映画は始まる。その仕事内容とは黒人のポールダンサーの用心棒。ところがそれにはとんでもない陰謀が関わっていて……というのが主なあらすじ。

ブルース・ウィリスはこの作品でヨレヨレのアンダーシャツに、二日酔い、無精髭と完璧な造型で登場。軽妙な返しや口の悪さはもちろんのこと、弱音を吐きながらのタフなヒーロー像はまんまダイ・ハードマクレーンだったりする。

そこに元フットボール選手の若き黒人が相棒として加わるのだが、境遇の違う二人が一つの事件を通して、固い絆で結ばれるというのは『ダイ・ハード3』であり、もしかしたら、あの自堕落な生活を送ってるマクレーンというのはこの映画のキャラクターを反映させたのではないか?とまで思わせるくらいだ。脚本としては3つくらいの事件が複雑に絡み合い、それがラストに向かって一つに集約していくなど、意外に凝っており、最後の最後までどこへ向かうか分からず、ハラハラドキドキの連続であった。

トニー・スコットの切れ味鋭いカット割は全編で冴え渡り、バブリーな装飾と人の命の軽さなど、終始ポップコーンムービーに徹底している。ストーリーも内容も良い意味でジョエル・シルヴァー印と言ったところだろう。

さて、この映画。おもしろいだけじゃなく、強烈に下品であるというのも見所のひとつだ。もしかしたら、今だったらテレビで放送するのも危ういくらい良い意味な下品さが全編を被っているのだ。まともな人間はおろか、本能のおもむくままに生きてるキャラクターが下品な行動や言動をひたすら繰り返すのである。

まず冒頭がすごい。八百長に苦しんでいるスタープレイヤーがフットボールをするシーンから始まるのだが、「なんとしてもタッチダウンを奪え」と指示された彼は何を思ったのか、試合中にボールを受け取ると、立ちはだかる相手を拳銃で撃ち殺すのである。あんなところに銃など持ち込めるのか?というところは謎だが、それでタッチダウンを奪うと、そのまま彼は自分の頭を撃ち抜いて大勢の前で自殺してしまうのだ。うーん、なんという下品かつインパクトのある出だしだろう。しかもこのシーンはさほど本編に絡んでるわけではなく、そう言った意味のなさも含めて最高である。ちなみにここで狂気に取り憑かれたフットボール選手を演じてるのは後に「ビリーズ・ブートキャンプ」で日本でも大人気になるビリー隊長ことビリー・ブランクスさんその人。

一事が万事こういった感じで、その後も強烈な設定やシーンは続いていく。

ウィリスに高額の仕事を持って来る親友マイクは、彼の生活のためを思って仕事を持って来たのかと思ったら、実はこの仕事がかなり危険であることが分かり、ウィリスに仕事をさせれば、もしかしたら彼は事件に巻き込まれて死ぬんじゃないかと考えた。じゃあなんで親友であるウィリスに死んで欲しいのかというと、なんとマイクはウィリスの奥さんと浮気していて、ウィリスが死ねば奥さんは自分のものになるというとんでもない動機があったからである。それにしてもなんてことを考える親友であろうか。結果、マイクはその道のプロによって爆死してしまうが、自業自得とはまさにこのことで、同情の余地もない。

ウィリスは正義感が異常に強く、そのせいで職を失ってしまったわけだが、それに反比例して精神は見事に安定していない。常に自分のことをクソッタレや出来損ない、クズと言い続け、ひとたびキレれば議員だろうが、それまで心を開き合ったヤツだろうが容赦なく殴るし、悪人の命など虫けら以下と言わんばかりに躊躇ないやり方で殺して行く。さらには自分の娘にアイスを食うか?とアイスを渡して、いらないと言われたら、そのアイスを窓からぶん投げるなど、確実にキレキレの異常者である。この親にしてこの娘ありという感じで、娘も強烈だ。ファックを中心とした、ヒットガールも真っ青な口の悪さをみせ、同じく口が悪い元フットボール選手を圧倒。口が悪いぞ!と注意した親父ウィリスもウィリスで、娘の前で「プッシーキャット」がどうしたこうしたというだけではなく、敵を油断/挑発させるのに、「お前のおふくろとファックしたぜ」などとやはり下品なことをいう。

それだけじゃなく、細かいところでもこの下品さは貫かれる。基本的にこの映画に出て来る男性は女性にたいして高圧的であり、一緒にプールに入って、無理矢理顔を抑えつけ、プールの中でフェラさせようとするキャラを執拗に描いたり、女性に暴力を振るうという性癖が明かされるシーンでは泣き叫び血だらけになるまで殴るというシーンが一瞬登場する。ウィリスの奥さんに直接暴力が振るわれることはないが、浮気を追及するシーンでは正直に言わないと(浮気相手が隠れてるであろう)押し入れに向かって撃つと言って、結局、押し入れは撃たないものの、部屋で拳銃をぶっ放す。

人を撃ち殺すシーンでは血は噴き出すわ、脳みそが飛び出るわ、あげくの果てに、唯一覚えていた、ヘリコプターの上に人が落ちるというシーンでは何万人が観ている前で人体が粉々に弾け飛ぶ。当然ながら無意味におっぱいも出るし、無駄に車は何台も爆破されるし、敵も味方も警察の存在というのを知ってるのか?と思うほどアナーキーでやりたい放題な連中しか出て来ない。

つまりだ、この作品はシュワルツェネッガーの『コマンドー』よろしく、ぼくらが観たかった良い意味で中学生ノリの下品な要素が頭の先から尻尾まで詰まっている、失われてしまった映画のひとつなのだ。最近ではこういう映画を放送しなくなってしまい、映画自体もこじゃれた海賊映画みたいなものしかもてはやされなくなってしまったが、ぼくらが映画に求めてるものはこれだ!と見終わった後に深い感銘を受けた。

というわけで、Twitterでこの映画についてつぶやいたら、ほとんどの人がぼくと同じようにおもしろかったけどなんとなくしか覚えてないという反応だったので、改めて記事にしてみた。もしこれを読んでなつかしー観てみようと思ったなら幸いである。あういぇ。

ラスト・ボーイスカウト [DVD]

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