金曜ロードショーか!『ラストスタンド』

ラストスタンド』鑑賞。いわずとしれたシュワちゃん映画復帰作。

いきなり感想を書くとびっくりするほど「シュワちゃんの映画」だった。金曜ロードショーで放送した『コマンドー』を録画して何回も観てた子供のときまで一気に時間を逆行させられた。それほどアーノルド・シュワルツェネッガーという人のたたずまいには映画的な力があるということだ。

ブルース・リー映画のブルース・リーブルース・リーそのものであるように、この作品でもほとんどキャラクターにたいする説明はなく、あくまでも「映画界に復帰してきたシュワ御大」としてドーンと登場。その潔さたるや見ていて清々しくなるほどで、ここまで徹底してくれたらぐうの音もでない。この時点でシュワちゃんのファンは観にいって損はないことが確約される。

前半、おいおいと思うほど無茶苦茶な作戦を決行して護送中の麻薬王を逃がすというところから映画ははじまる。それと平行して平和すぎるメキシコの国境付近の町で殺人事件が起こるのだが――――――――いきなり元締めが大暴れするので、あ、これ最終的にこっちの方につながるなというのが見え見えであり、そのへんのサスペンスやミステリー性はない。『ホット・ファズ』のようにかつて都会で大活躍した保安官と田舎から出て行きたい若者との交流などもあって、この方向性なのかと思いきや、中盤にうまい仕掛けがあり男泣き必至。っていうか『エクスペンダブルズ2』と一緒なんだけど。

確かに設定など『バニシング・ポイント』か!と言いたくなるほど破綻しているのだが、これが後半に活きてくる。この現代においてゾンビやSF的荒廃感を使わずに『リオ・ブラボー』をするにはどうすればいいか?という伏線になっていて、それを無理矢理なアクションでダレることなく、観てるこちら側を強引に納得させているのだ。

そのアクション演出だが、シュワちゃんの復帰作であると同時にキム・ジウン監督のハリウッド進出作でもあるということで、監督の持ち味はある程度発揮されていたように思う。「ある程度」と書いたのは『グッド・バッド・ウィアード』のようなド派手なケレン味を期待すると肩すかしを喰らうからで、元々この監督はフェイセズの演奏のように細部がヨタったとしても、どの場のノリとグルーヴだけでラストまで突っ走るというような資質があり、勧善懲悪のアクション映画との相性はあっている気はした。それがハリウッド映画の土壌であればなおさらであり、これ以上の適任はいないとかなり期待していたのだが、現場のコントロールができないなどのジレンマを鑑みても、キム・ジウン監督作という観点で見ると物足りなさを感じるのは事実である。しかし、トウモロコシ畑でのカーチェイス信号弾みたいなもんを人体に撃ったら……ドーン!ベチャベチャベチャー!――――小さな町に不必要なほどクソでかいスクールバスからの〜ドガガガガガガー!!!など、個性的な部分も散見され、これからの布石として名刺代わりの一発にはなったのではないだろうか。

というわけで、キム・ジウン監督作とすると『悪魔を見た』ほどのパワーはないが、シュワちゃん復帰作としては何の問題もない。むしろこのレベルの映画が出来上がって来たことに驚いたくらいだ。グッとくるセリフも多く、金曜ロードショーで放映されたらTwitterはきっと盛り上がることだろう。なるべくレイトショーでビール片手に鑑賞していただきたい。ボンクラにおすすめ。

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↑みんなうまいこと書くなぁ。