とりあえず『マニアック』をボカシなしで観た
『マニアック』をUS盤で鑑賞。
日本版はボカシが入った改悪版と言われていて、公開時にナマニクさんが記事にして話題になったが、先立って観にいった人の話によると、ゴアシーン以外でちょくちょく主人公の視点がぼやける(ピントがはずれる)ため、その演出を利用して、うまい具合に隠していたとのこと。ボカシが入ってると知らずに観にいったのでそういうもんだと思ったらしく、それはそれでかっこよかったらしい。
『ドラゴン・タトゥーの女』も同じように日本ではあるシーンで勝手にモザイクが入っていたが、あれは突拍子もなく、いきなりAVみたいになるので違和感があった。それに比べれば少しはマシだったといえよう。
とはいえ、それはあくまで「そういう意見もある」ということであり、そのボカシに違和感を覚えた人がほとんどではないかと推測する。結局、映画の出来/不出来以前にぼくも劇場で観るのをやめたクチではあるが、US盤を買おうとした際、何を思ったのかソフトにボカシが入っていたらどうしようとしばらくためらっていた。しかし、本国でボカシなしで公開したのに、そこで発売されるソフトでなぜボカシが入るんだ?と冷静になって購入し今に至る。そんなことを思わせたのもすべて日本のボカシ問題のせいである(ヤツ当たり)。ちなみに日本で出るレンタル/セル盤は両方ボカシなしのいわゆるアンレイテッド・バージョンというヤツらしい。なんじゃいな。
プロディジーの“Smack My Bitch Up”のPVのように主観映像で撮りつづけ、さらに殺す側から描いているので「たすけてー殺されるー」という恐怖を追う側から見れるという超斬新なスラッシャー映画。
その主観映像は徹底されており、鏡を見ないと自分の姿が映画のなかに写りこまないわけだが、この俳優としては損な役回りをイライジャ・ウッドは見事に好演。鏡を見てブツブツとつぶやいたり、車に乗って夜の街を徘徊するシーンが多いなど、スラッシャー映画でありながら現代の『タクシードライバー』ともいえ、しかもシンセの使い方が『時計じかけのオレンジ』のようであり、主人公がやや汚らしいが、かわいらしい容姿で、母性本能をくすぐる仕草で女の子を誘って殺すというのもそれっぽいなと思った*1。
物語はシンプルで次々にいろんな女性が主人公の毒牙にかかり殺されていく。その様を描いているだけである。主人公の主観であるため、彼が殺してる間に何を考えているのか、行動の途中に何を思い出して、何を妄想しているのか?まで映像になり、それがドンドン入り込んでいく。これは普段何かをしながらもいろんなことを考えている我々の行動がそのまんま映像で表現されていてリアリティがあるなと思った。もちろん殺す側から描いていたとしてもサスペンス性は高く、最後の最後までハラハラし、気が抜けなかった。
ゴアシーンは鮮烈でありながら意外性があり、もちろん残虐。景気よくポーンと人体が弾け飛ぶわけじゃなく、頭皮がずるずるずるーっと剥けるので、『死霊のえじき』を見ているようであった。オリジナル版は未見だが、トム・サヴィーニが担当しているということもあってオマージュを捧げたのかもしれない。
特にオープニングでの表現がすごくて物語の幕開けにふさわしいと思ったが、いわゆるその改悪版はここでキレイにボカシが入るようで当然ながらそのインパクトは弱まるのではないかと危惧した。
というわけで、その表現から手法、内容までどこを切っても一級品の大傑作。ホントに大変素晴らしかった。実際ボカシが入ると違和感が生じるのにも関わらず多くの人に観てほしいというふざけた言い分での改悪や公式でそれをアナウンスしないなど、日本での劇場版に関してはすべてにおいて言語道断である。
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*1:時計じかけ〜では3Pに持ち込むわけだが