3DSをもらって『モンハン4』を買った


3DSいる?」

こんな奇怪なメールが友人から届いたのはかれこれ二週間ほど前になる。

彼が数年前から『モンハン』にハマってたのはチラっと聞いていたが、ぼく自身は二時間プレイして飽きたという経験もあり、さらに本人もぼくとおなじ意見でわりと昨今の“狩り”ブームには冷ややかな視線をおくっていた。

強烈な「アンチ」からあるきっかけで「推し」になるとその反動で「神推し」になることがあると、あるアイドルヲタから聞いたことがあったが、彼は典型的なその症例に当てはまり、見事に仕事以外の時間を、いや生活を『モンハン』にささげていた。

彼とは二十数年の付きあいになるが、ぼく以上にあまのじゃくな性格であり、当然『モンハン』のようなメガヒットゲームにハマるとはつゆ知れず、しかもそんなことになってるなんて思いもしなかった。そして、ぼくがあまり『モンハン』に良い印象を持ってないことも知っていたので、言ったところで無駄だと分かっており「一緒に『モンハン』しよう」とは一言もいってこなかった。

つまり、そんな彼が、ぼくの性格も理解したうえで3DSをくれるということは暗に「てめーここまでしてやってるんだからオレの狩りの手助けをしろ」ということなのである。

家に取りにいったら最後だと思っていたが、彼はぼく同様、任天堂原理主義者でもあるので、21日に発売されたマリオの新作も当然買っているわけで、それをプレイしたくて遊びにいった。ついて早々3DSを受け取り、さてマリオをやろうかなと思ったら衝撃的な一言が彼から飛び出した。

「マリオ買ってないよ、お前がモンハン買いにいくときについでに買おうと思って」

完全に先手を打たれた。これは暗に「てめーがモンハン買って、狩りの手助けをするなら『マリオ』を買ってやってもいい」ということである。

それでも渋っていたらさらに彼がこんな取引をしてきた。

「オレLLを会社の上司からもらったんさ。なんか壊れて修理に出したんだけど、その期間モンハンやれないのがツライって、新しいLLを買ったらしいのね。んで直ったヤツをオレにくれたから、まぁ3DSをお前にやれると。んでLLにはアダプターがついてないから、それはそのまんま使わなきゃいけない。だから3DSのアダプターはお前が買わなきゃいけないんだけど、まぁモンハン買うならアダプターはオレが買ってやる」

ここまで来たら買わなければ逃げられないレベルだ。むしろ脅迫といってもいい。モノポリーでいえば、オレンジの土地を一枚だけ持ってるぼくにたいして「二枚くれてやる」と、それ相当の代価を支払わないとわりにあわない取引を持ちかけてきたようなものである(実際彼はモノポリー仲間でもある)。つまりそれだけの環境を整えてやったんだから……もう分かってるよな?と彼は言っているのである。

結局観念してビッグカメラに行き『モンハン』のダウンロード版を購入した。

30分かけてダウンロードをし、夕方からビール片手に「狩り」に出かけたのだが、なるほど、悔しいが確かにこれはおもしろい。ふたりでやってこれだけ盛り上がるのなら、四人でやったときはどんなことになるのか………それは想像に難くなかった。

最初は通過儀礼のごとく「ここにモンスターがいる。ペイントボールで印をつけておいたから、お前がひとりでいって、とりあえずモンスターと戦うことを覚えろ」と、遠くから見てるだけでなんの手助けもしなかったが、ぼくがある程度操作を覚える頃には「使い慣れない武器の練習」といって彼も本意気モードになり、ドデカイモンスター相手にでっかいハンマーをブンブン振り回していた。

プレイして5時間。すでにぼくの頭は「あの武器を作るためには、あの材料とあの材料が必要で、その材料を得るためにはあの猿を倒さなければいけなくて……」と「狩り」のことばかり考えている。

モンスターハンター4 - 3DS

モンスターハンター4 - 3DS