チャラ男芸人慶

ご飯になめたけをぶっかけて、がっつきながらHDDに録画したメレンゲの気持ちを見てたら、チャラ男芸人慶というヤツが出て来た。ワッペンがゴテゴテ付いたショートデニムに盛り上がった金髪、サーファー御用達のTシャツを着て、やたら黒い肌に「マジ、ヤバくなぁい?」という若者言葉。ネタも冴えてるわけではなく、一発屋の要素が満載。この男はぼくに嫌われる要素を十二分に纏っていた。

ところがだ、この慶という芸人が喋る番になって、喋りだしたら、その話術の上手さに一気に引き込まれた。とにかくフリートークが無茶苦茶上手い。ナンパを良くしてたというから、それで鍛えられたのかもしれないが、自分がどういう風に世間に見られているか知っていて、それを分かったうえで、あのキャラでいるようにも見えた。何よりも、ビジュアルから想像されるようなイヤミがまったくない。自らの事を「バカでKYなもんですから」と言っていたが、MCの久本も普段なら「ホンマその通りやなぁ」と言うところを、あえて言わずにその話術の虜になっていた(ように見えた)。

慶は芸人になる前、ニートだったという。当時付き合っていた彼女に勉強を教えてもらい、夏休みの間、死ぬ物狂いで勉強して大学に合格するも、入学金の支払いを忘れた事で、大学に行けなかった。あきれ果てた彼女は「チャらいのはいいけど、バカは嫌なの!」と、彼と別れる事を選ぶ。些細なミスとは言え、大学にも行けずに進路を断たれ、さらに付き合ってた彼女に振られてしまった彼がニートになってしまうのも分からなくはなかった。

慶は、その後、好きな娘が誘ってくれたお笑いライブで脳天撃ち抜かれる衝撃を受ける。ドッカンドッカン受けてる中で、彼は漫才をしている芸人が輝いて見えた。「オレがやりたいのこれかもしんねー」と、道が開けた気がした。それがアンタッチャブルのライブだった。彼はアンタッチャブルの楽屋に無断で訪問し、「自分、芸人になりたいっすけど、どうすればなれるんっすか?」と直球で言葉をぶつけた。まずは養成所に行く事を進められ、入り方も教えられた彼は養成所に通う事になる。

ここまで書けば分かる通り、慶という男はボンクラである。いわゆる、こちら側の人間だ。底抜けにダメな人間で、底抜けにバカである。でも、ぼくはそこに強烈なシンパシーを感じてしまった。いわゆる、ぼくが好きなタイプの人間で、喋り方も何かしら通じるもんがあったようにも思えた。

キモキャラが重宝され、アイドル的な人気を誇るバカが多く、さらに変なキャラが量産されつつあるお笑いの中でも、狩野とは違い、応援したくなるタイプの男がチャラ男芸人慶であった。ぼくは彼の事が好きだ。なんか、昔気質の芸人の雰囲気すら感じる。これからも彼の活躍に期待したいところだ。あういぇ。