『アンナチュラル』第7話がちょーすばらしかった件
Twitterでやたら評判が良かったというのもあり、同スタッフが手がけた『Nのために』も傑作だと思っていたので、なんとなく『アンナチュラル』を2話から毎週リアルタイムで観ていた。
とはいえ、実はみんなほど熱狂していたわけでもなく、結構「?」マークが点灯しながら鑑賞していることもしばしば。
ここからネタバレ全開
例えばその見始めた第2話である。
SNSで知り合った者同士が自殺した……というタイムリーな話ではあるのだが、あの犯人はなんであの家で一家心中すること知ってたんだろう。しかも練炭自殺になぜ詳しいのか?法医学者ですら遺体を調べないとわからない事実(冷凍した死体と練炭自殺の死体は似ている的な)を本かなんかで読んで調べたのだろうか?よしんば調べて知っていたとしても「あの一家心中が別人で自殺サイト内で知り合い、サイト内で話をしてあの家で心中しようかと決め、それを犯人が見ていて、そこに別な場所で監禁されて殺された三毛猫が放り込まれた……」というややこしいことをしてまでなぜ死体を隠そうとしたのか?あんだけ離れた場所なら山にでも捨てればいいだけの話で、そこまで運び込むことも大変でリスクがありすぎる。
おもしろかったんだけどあまりの情報量の多さとスピード感で終わってみたら「???」という印象があり、これはこのあとのいくつかのエピソードでも同じような感想をもった。
特に顕著だったのは第5話だ。
駆け落ちし、結婚寸前だった彼女が入水自殺した。目撃証言もある。しかし婚約者である男は彼女が自殺するはずないという。だからUDIラボで調べてほしいというのがあらすじ。
結果、彼女は自殺ではなく、事故的に溺死。犯人は彼女の幸せを妬んでいた同僚で、彼女と同じ恰好をして海に飛び込み、それを目撃させることで、自殺に見せかけようとしたというのがことの真相。
それを最後の最後数分で一気に説明してから衝撃的なオチで終わったため、考えるスキも与えなかったのだが、終わってみると、自殺に見せかけて飛び込んだとして、そこからバレないように隠れて泳ぎ切って陸にあがるってのは結構難しいはずで、彼女がそのまんま死んでしまってもおかしくはない。そしてそのあと、彼女は全身しとどに濡れた状態で家に帰ったことになるのだが、仮にすぐ近くに車があったとして、その車に乗り込むところを見られたとしたら……とか、その方法じゃなくてもよくね?と思ってしまった。もっといえば、事故的に亡くなってしまったのなら、それを警察にいってしまったほうが……
とまぁおもしろい部分と納得いかない部分が解離しすぎた結果、終わってみると奥歯にモノがはさまったような感じになってしまったのだが、先日放送された第7話がすごかった。
これまたSNSを使った話で、動画サイトで死体を見せ、その死体を見た段階で彼が何故死んだのかを解明するというもの。
ぶっちゃけここ1年くらい最新の映像作品に触れてなかったのだが、ぼくの印象だと、フィクションに出てくるSNS描写というのはいかに現実に近づいているのか?を再現するだけに留まっていたような気がする。映像に出てくるLINEもTwitterも、なかなかリアルだな程度で、添え物でしかなく、ここまでSNSが身近になったからこそ、ここがリアルじゃないと、入り込めないという人も多いのではないかと思う。だから入り込めさえすれば、あとはそれと関係ない恋愛やら犯罪やらを描けばいいわけで、エンタメのなかでそれがしっかり機能していたわけではなかったのだ。『何者』でさえもそれを思ったくらいで、実際にブログに書いたときもそのことにはなにひとつ触れなかった。
『アンナチュラル』はそこを見事に突破した。
この7話では、なぜ動画配信サイトなのか?なぜ観覧者数を集めたのか?というのが物語のキーであり、仕掛けになっていて、オチもメッセージもセリフもその仕掛けをしっかりと援護射撃しているような印象を受けた。いつもはワイワイつっこんだりしながら、家族で観ていたのだが、あまりの物語の見事さと重厚さに皆がだまって食い入るように観ていた。妹に至っては翌日に2回目を観ていたくらい、この7話には感動していた。
ぶっちゃけ『アンナチュラル』はこの7話だけを観るために観てもいいとさえ思える。それくらいのクオリティとスピード感とメッセージ性がある。あまり細かくは書かないが是非多くの人に同じ感動を味わってほしい。おすすめしたい。心から。
……実はライターの仕事が舞い込んでおりまして、こんなこと書いてるヒマはないのであります……京極夏彦の新刊も読んだのでその感想もあげたいんですが、いかんせん14時間労働なもので……