型破りな演出そのものが立川流『赤めだか』

ちょー遅ればせながらTBS年末ドラマスペシャル『赤めだか』を観た。

立川談春の同名エッセイの映像化。師匠、立川談志との出会いから前座時代の厳しいエピソードなどを描き、これを落語のバックステージものではなく、あくまで触れ込み通り、青春グラフィティとしてさわやかに活写していく。

あの立川談志をかつて弟子だったビートたけしが演じ、談春二宮和也が演じる。ほかにも北野組常連の寺島進、岸本加世子、落語に精通しているさだまさしや談志からたけしに師匠を変えたダンカンなど、全体的に分かってるキャスティング。

落語の話だろくらいに思って見はじめたのだが、開始5分で傑作を確信した。中心だけクッキリしており、まわりはピンぼけてる映像、めまぐるしくチャカチャカしたカット割り、たけし演じる談志も北野映画同様、バカヤローコノヤローの応酬であり、全体にテンションは高め。印象的なセリフや脚注すらも画面に大写しにし、あとはナレーションで説明を加えるという大胆さ。まるで立川流の型破りさを演出そのものであらわしているかのようで、そのアティチュードと作品からほとばしる才気が合致した希有な例のドラマといえる。

音楽の使い方もおもしろい。基本的にメジャーどころなんだけど、好きな人は好きという絶妙な選曲でスティーヴィー・ワンダーローリング・ストーンズビートルズ(カバーだったが)、カーペンターズモンキーズブルーハーツRCサクセションビートたけしシュガーベイブ玉置浩二斉藤和義などがかかる。歌詞の意味と場面があってるわけではないし、84〜88年の話なのに、その年代以降の曲がかかったりしておかしいんだけど、好きなんだからこの場面で流させてくれよーって感じが嫌いになれない。

監督はタカハタ秀太という方で存じ上げなかったのだが、なんと「元気が出るテレビ」にかかわっており、その時点でビートたけしとも関わりがあり、そんな彼がビートたけしの出演のドラマを撮ることになるとはなんて感慨深い話なんだろうか。

落語をテーマにしつつ、主人公たちがどうやって落語を覚えていくのか?みたいな「努力」の部分が抜け落ちてはいたり、結局談志と協会の関係性、なぞの批評家の存在などわからずじまいなところもあったが、スピード感と勢いと音楽で一気に見せ切る。全編名シーンでとてもエモーショナル。CMを抜いて2時間ちょっとといった具合だが、まったく飽きることなかった。大傑作といってもいいだろう。もし録画し忘れていたならレンタルでもいいから観てほしい。おすすめである。

赤めだか [Blu-ray]

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赤めだか (扶桑社文庫)

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