アンジャッシュ児嶋がイジられ芸人になった日


俳優としても活躍するアンジャッシュ児嶋がイジられる芸風にシフトしたのはいつ頃だろうとふと考えたことがある。

ウィキペディアによると2011年頃らしいが、コンビ解散しそうな芸人に選ばれるほどパッとしなかった彼が、2011年以前に異常なほどイジられ芸人としてハネた日があったことをご存知だろうか。

検索しても出てこなかったのでこうして記事にした次第なのだが、それは業界視聴率No.1と噂されるアメトーークにて。恐らくハズれの回にあたるであろう「ハワイ大好き芸人」のときである。

ハワイによく行くという芸人と、これからハワイを好きになりたい芸人が集まり、旅行会社の社員としてハワイで働いていたおぎやはぎの小木をリーダーにハワイの良さを語り合うというユルめの企画。ところが何の因果か、奇しくもひな壇の前列に座っていたのが向かって左からおぎやはぎのおふたり、アンジャッシュ児嶋、バナナマン設楽アンタッチャブル山崎という今思えば絶好のフォーメーション。

センターに陣取ったアンジャッシュ児嶋は当然のごとく(これも失礼な話であるが)、いい感じで「普通っぽいウソのつまらない話」を披露してスタジオを変な空気にする。するとその後なぜかザキヤマが執拗にそのことについてイジりはじめるのである。

まだこのときはザキヤマのガヤもいうほど浸透しておらず、MCから「おもしろいけどジャマ」と言われる始末で、児嶋もまだそこまでイジられる人というイメージもなかったように思うが、同じ事務所の先輩/後輩、さらに有吉と熊田曜子くらい絶妙にヒドいことがいえるという間柄ということもあってかザキヤマがスベったことにたいし、攻めて攻めて攻めまくる。「バラエティに出てお客さんを静かにさせる必要ないじゃないですか」という名言も飛び出し、MCの宮迫をして「山崎くんのせいで児嶋さん完全にドアウェーになってしまいましたね」と言わしめるほど流れがガラっと変わってしまった。

するとどうなるか?当然裏回しとしての仕事をひな壇でこなしていたバナナマン設楽おぎやはぎの矢作もアンジャッシュ児嶋をイジるという方向にシフトした。普通に「夕日がキレイなんですよね」って言っただけでもスベった空気にさせ、そのあとに「お笑いの日没ね」 「お笑いサンセット」 「サンセット児嶋」などガヤの援護射撃。そのことによって妙な空気だったスタジオがどんどん笑いに包まれていく。さらに「なんでノコノコ収録にやってくるの?」 「なんで芸人辞めないんですか?」 「なんでみんながわかることをテレビでいうの?」など、今やられてることと変わらないクオリティでイジられ続け、あまりのみんなの暴走っぷりに雨上がり蛍原も「ちょっとまって、何がハワイ芸人やねん!今日何の回?」と制止するほどであり、そのあとにテロップで「児嶋イジリ芸人?」と出たくらいこの回で何かが変わったと思わせる破壊力があった。

確かに「ハワイ大好き芸人」は企画としてはかなりユルく、そこまで笑えるものではないかもしれないが、ひとりの芸人のターニングポイントがハッキリ見れるという意味ではかなり貴重な回だといえる。しかもこれが放送されたのは有吉弘行が「おしゃべりクソ野郎」でアメトーーク大賞の流行語をとり、「中学時代イケてないグループに属していた芸人」がギャラクシー賞を受賞した2008年。あまりに大きな波に隠れる形になってしまったが、実はその陰でアンジャッシュ児嶋も同じようにある種のブレイクを果たしていたのである。

先日放送されたアメトーーク10周年記念でもフット後藤がはじめてイジられた回がフィーチャーされたが、もし尺があればこっちも取り上げてもらいたかったくらい、その瞬間はかなりおもしろかった。もし、お手元にそのときの録画があるかたは是非今一度見ていただきたい。もしくは関係者の方がこれを読んでくださったらなんとかDVD化に向けて動き出してほしいものだ。