見た目で判断するのはよくない『ニード・フォー・スピード』

ニード・フォー・スピード』をレンタルDVDで鑑賞。

劇中で「ハイヒールを履いた英国女だからって下に見ないでよね」みたいなセリフがあるが、これほどまでにこの作品を象徴した言葉はないだろう。原作がゲームであることも知らず、そのタイトルとティーザーから『ワイルド・スピード』に毛がはえたようなチャラついた映画だと思ってスルーしてたのだが、Twitterで一部好事家が「これはすごかった」と激賞していておすすめされたので観た。

開始五分、まるで全シーンがクライマックスであるかのようにカメラは縦横無尽に動き回り、それでいてカット割りはかなり早くめまぐるしい。その時点でスコセッシの『カジノ』を彷彿とさせるが、そのあとにわざわざドライブインシアターで『ブリット』を流すシーンを入れるなど、いきなり「映画ファンよナメてもらっちゃこまる」という監督の所信表明が見られる。

ティーン向けのような瑞々しさに溢れているが、映画は骨太でクラシカル。特に前半のカーチェイスは『ザ・ドライバー』のように重厚。映像はチャカチャカしているのだが、人物の心情を込めたシーンは長回しにしたりと、ちゃんと緩急を使い分けており、意外とクローズアップが少なく、人物配置など画面設計にもこだわりを感じる。

ストーリーがありがちで弱いと書かれているが、復讐劇であり、警察とバウンティハンターに追われながら、ある地点まで移動するという『隠し砦の三悪人』要素があり、浪花節的なチーム萌えに『ドライヴ』とは違う方向性の「先を読むカーチェイス」など、実は見所満載で盛りだくさん。最後の決闘シーンに至っては銃が出てこない西部劇のようでもあり、もっといえばカンフーのかわりにカーチェイスをやるような映画でもある(なにかするとすぐに車を走らせるため)。

キャストも大御所と中堅、若手をバランスよく配置しており、イモージェン・プーツが人気のようだが、ぼくはケイシー・アフレックをもっとワイルドにしたような主演のアーロン・ポールのかっこよさに濡れた。むしろこの二人のホットな共演で引っ張るスター映画でもあるということなのだ。

2時間10分と、この手の映画にしてはやや長めであるが、そのわりに無駄なシーンが一切なく、シーンとシーンの間が一気に飛んだりと、ホントに古き良き時代の映画を観ている気分にさせられた。チャラチャラした若者の中身がおっさんだったみたいな作品で、傑作というよりは変わってるんだろうが、それこそ『ファースター』や『アウトロー』みたいな感じで、そのギャップにやられる映画ファンは少なくなかったのではないかと思われる。おすすめ。