注・相当話題になった映画なので観た人にしか分からない書き方をしています。
『桐島、部活やめるってよ』ちょー遅ればせながらBSで放送したヤツを鑑賞。
そのカメラワークや、金曜日が何度もそれぞれのキャラクター目線で映されるなど、基本的には襲撃が起きない『エレファント』といった具合。襲撃の変わりに起きるのは「桐島」という男がある日、急に学校へこなくなり、部活をやめるという噂がたち、いっさい連絡もとれなくなるということ。そのせいで高校の人間関係に微妙なズレと変化が生じていくというのがあらすじ。
のちにビックネームになる俳優たちの存在感、主役の神木隆之介でさえもつめたく突きはなす監督の第三者的視点、タランティーノシンドロームから一歩ぬけだした絶妙な固有名詞のチョイス、少ないセリフでわかりやすく提示する人物の関係性、ラストの対話を説明してるような高橋優のエンディングテーマなど地味ながら最後の最後まで見どころ満載。それぞれ誰に感情移入するかで見方が変わるため、自然と複数回の鑑賞にも耐えられるつくりになっており、そういった意味ではティーンエイジャーを主人公にした『東京物語』のようでもあった。何よりも終わったあとに仲間内であーだこーだ言いあえるのは良い映画である証拠。
評価が高いのはよくわかるし、大変よくできた映画だが、ぼくは終始、観ていてイライラした。何にイライラしたかってそのキャラクターたちにである。
東出!スカしてんじゃねぇ!
映画部顧問!ゾンビ映画バカにすんじゃねぇ!
パーマかけたチャラついたヤツ!なんかムカつくな!
おい!吹奏楽部!まずその場所をどけろ!
屋上から飛び降りたヤツ!お前は誰だ!
運動部のヤツら!全員死ね!
神木!たまたま橋本愛が『鉄男』観てたからって勝手にときめいてんじゃねぇ!あと場所取れなかった腹いせに運動部にあたってんじゃねぇ!
桐島!学校休んでんじゃねぇ!!
……しかし、映画の出来/不出来とは関係ない部分でこういうことを思ってしまうこと自体、この映画にやられているということなのかもしれない。久々にとてもよい日本映画を観たなという気分になったのも事実。
とりあえず見終わってまっさきに思ったのは、ぼくは桐島がいなくなってうろたえる側の人間じゃなくてよかったなということである。ただ、これが学校じゃなくて、たとえば………ラーメン屋とか寿司屋が舞台だったらはなしはまた変わっていたわけで。ひとりで店をまわせるくらいのスピードで麺上げできたり、寿司をにぎれるスゴ腕の職人がきゅうに休んで連絡とれなくなって、もしかしたらそのまま店をやめてしまうかもしれないとなったら「いやいや!どうやって店まわしていくねん!」って慌てふためいてたであろう。
そう、結局ぼくも桐島側の人間を笑えないのだ。