「映画は二回観たほうがいい」なんて言いますが……『裏窓』

ヒッチコックの『裏窓』をちょー久しぶりに観たんですよ。

脚を骨折したカメラマンがひまつぶしに向かいのアパートの部屋をいくつかのぞき見してて、そうしたらそのなかのひとりがどうも奥さんを殺したっぽいなと思って勝手に調査する………

まぁこういう話じゃないですか。実際そういうサスペンス映画だと思ってたわけですが、数年振りに見返したら全然違う話だったんですよ!

主人公にはものすんごくキレイで仕事もバリバリできる彼女がいて、その彼女が主人公のカメラマンと結婚したがってるわけです。めっちゃ惚れてて、すげえ尽くしてるんですよ。わざわざワインを届けさせたり、レストランの料理を持ってきてもらったりとか。

ところが主人公は結婚したくないので、そのことを打ち明けたとたんにふたりは痴話喧嘩をはじめて、そのせいで彼女が部屋から出て行ってしまいます。その夜はラブラブですごす予定だったので一気にテンションダウン。うーむ、脚骨折してて動けないし、やることねーなーって感じで向かいのアパートをのぞき見するという展開だったんですね。ここに動機があったわけです。まったく覚えてなかった。んで、主人公は何をのぞいてるかというと、夫婦のことなんですよ。

つまり、主人公は彼女にいわれて「結婚とは何か?」について考え、それで他人の生活を見て知ろうとするわけなんですね。新婚だったり、熟年夫婦だったり、もちろん未婚のカップルだったり。そこで昨日まで奥さんがいたはずのある部屋から奥さんがいなくなってるということに気づくわけです。そりゃそうですよね。普通にボケーっとのぞいてるだけだったらいなくなってても気にならないというか、そこまで早く気づかない。結婚のことや夫婦のことを考えてたわけですから、すぐに「あれ奥さんは?」と気づく。「これはおかしい、彼は奥さんを殺したんじゃないか?」と疑いはじめ、そこから調査をすると。

警察には「お前の妄想だ」といわれ、最初は彼女も「あなた頭おかしいんじゃないの」とかいうんですけど、彼女は彼氏にぞっこんですから。話は聞いてあげるわけです。そうしたら結婚指環がどうしたっていうくだりでもって、いの一番に気づくわけですよ。女の勘ってやつでしょうか。そこから彼女も興味をもちはじめて………とまぁここからネタバレになるんで言いませんが、まぁ……危険な目にあうわけですね。

するとどうなるか?そこで主人公は「はっ」とするんですよ。彼女のことを心底心配し、いなくなったら困ると思うわけです。本当の愛に目覚めるというか、大切なことに気づくんです、この事件を通じて。

これはスピルバーグが『ジュラシック・パーク』や『宇宙戦争』で子供を使ってやってますが、一種の通過儀礼というか、まぁ大人になるという話なんですね。

だから久しぶりに観てたら40分くらいしても全然話がはじまらないし、ミステリーにもなりゃしない。しかし、端から男女の話だなと思えば納得です。フィルマークスでも「オチが弱い」とか「サスペンスとして長い」という感想が続々あがってますが、それも分かる気がします。

でもですね。そういう話だと理解してもですよ。やっぱり主人公のリア充感が許せないわけですよ。絶世の美女であるグレイス・ケリーに惚れられてるくせに結婚したくないとか生意気いって、しかもことあるごとにイチャイチャして……

だから個人的嗜好もあいまって、そこが引っかかってみなさんが評価するような感じになりませんでした。映画は二回観た方がいい、二回目の方が評価が上がるなんてよく言いますが、二回観たことでちょっとイラっときたのはこれがはじめてです。