ロバート・アルトマンの映画を観てるような楽しさ『デッドプール』
『デッドプール』をBDで鑑賞。
親に虐待されて育ち、トラブルシューターとして日銭を稼いで生活している主人公の元にコールガールが現われて意気投合。ようやく人生に希望の光が差し込んだのもつかの間、なんと彼は末期ガンと診断されてしまう。そんな彼に「末期ガンを治療するための人体実験を引き受けないか?」と誘いが。わらをもつかむ想いでその実験の被験者になり、彼は病気どころか傷すら跳ね返す不死身の身体を手にするが、その副作用で全身の皮膚が火傷したように爛れてしまう………というのが主なあらすじ。
低予算が故に見せ場がなくて、場所もあまり動かないので画が持たないみたいな感想を事前に見聞きしていたのだが、ぼくは逆で、そのふたつしかない見せ場もモーション速度を変えまくることによって持たせたり、その合間に主人公の過去を入れたりして飽きさせず、キャラクターもそんなに出ないからこそ画がチャカチャカせずに見やすく、あまり撮れないぶんランタイムも108分とタイトになっていて、低予算であることをうまく利用しているなと思った。というよりも今までのヒーローコミック作品が思いのほか壮大すぎたといったほうがいいのかもしれない。
特に気に入ったのは友人との関係性というか描き方で、顔が醜く変型してしまった主人公にたいし「腐ったアボカド同士から望まれずに生まれた子供」とか「金玉に歯が生えたような顔」とか容赦なく言ったり、これからカチこむぞというときも「オレ行きたくないから行かない」とその友人が出てこなくなったりするが、その妙な突き放し方に幼なじみとの付き合いを思い出し、笑いながらも泣きそうになったりした。
ボヤーっとした日常を送っていた男の元にコールガールが……というのは『トゥルー・ロマンス』だし、能力を手に入れた代償に醜くなるというのは『ダークマン』だし、既存のポップソングを演出に使うというのは『キックアス』で、恐らくそのあたりはオマージュの範疇だろうが、ぼくは映画の定型をグイグイ外してくる展開や要所要所にメタ展開を挟み込み、内輪ネタをガンガン言ってしまうという演出など、全体的にロバート・アルトマンの映画を観てるような楽しさがあった。脚本は『ゾンビランド』の人だと知り、合点がいったのだが、それとは別におっぱい絡みのギャグや役者の名前を平気で言ってしまうギャグも含めて『M★A★S★H』や『ザ・プレイヤー』を思い出した。そういう意味も含めてシネフィルから秘宝系まで幅広くおすすめしたいところ。
- 出版社/メーカー: 20th Century Fox
- 発売日: 2016
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