ブルース・リーが死ぬほど好き。

ストレスを解消するやり方というのはいろいろあるが、主人公が怒り狂った映画を観るというのが私のストレス解消法。

自分の代わりにやり場のない怒りをあらわにしてる主人公を観るとね、『何をオレはこんなちっぽけな事でイライラしてたんだ』と思うんすよ。それは『タクシードライバー』だったり『カノン』だったりするんだけど、やっぱりなんと言っても主人公が怒り狂ってる映画と言えば『ドラゴン怒りの鉄拳』が一番である。

もう何回も見ているが、何度見ても飽きない。復讐劇と言えばこれ、そしてブルース・リーと言えばこれなのである。世間的にはブルース・リーの最高傑作は『燃えよドラゴン』であるが、私は違う。真のリーファンには怒られそうだが、ブルース・リーの哲学と他の外国人達の立ち振る舞いにすごく違和感を感じてしまう。これはレビューにも書いたが、ブルース・リー以外のシーンが非常にウザい(笑)もちろんアメリカ第一弾という事で、ブルース・リーだけというわけにはいかなかったのだろう。『ドラゴン怒りの鉄拳』はブルース・リーの主演第2作だが、彼の魅力はこの作品で出尽くしてしまってる感がある。

猫の様なしなやかな動き、虎の様な素早い一撃、怒りと哀愁に満ちた表情、怪鳥音、無駄に言葉を喋らずボディランゲージだけで表す様、ヌンチャク、截拳道、今観ると映画自体は若干緩いが、ローウェイの独創的なカメラワークと相まって、ブルース・リーのかっこ良さが他よりも際立っている。もちろん『燃えよドラゴン』は一番回数を見てるし『ドラゴンへの道』も『ドラゴン危機一発』も好きだが、『ドラゴン怒りの鉄拳』が私にとってベストなのだ。実際『ドラゴン怒りの鉄拳』はジャッキーもリー・リンチェイもドニー・イエンもリメイクしてる。もしかしたら『ドラゴン怒りの鉄拳』は影の最高傑作なのかもしれない。

ジャッキーチェン=カンフー映画だと思ってた私を虜にした男・ブルース・リー。一番好きな役者は?と聞かれると絶対にブルース・リーと答えるだろう。彼の事は役者としてというよりも人として尊敬している。よく考えたらバスターキートンの自伝以外、役者の本を読んだ事がない私が、ブルース・リーに関する本はたくさん読んでいて、TVでも特集が組まれるとビデオに撮って繰り返し観る。人によってはスティーブマックイーンだったり、ジェームズディーンだったり、松田優作だったりするのだろうが、私はブルース・リーに一番カリスマ性を感じ、考え方やその言葉、思想など、一番影響を受けてきた。

彼は役者ではなく、武道家であり、哲学家でもある。近年『カウボーイ・ビバップ』というアニメでもブルース・リーの思想は根付いていた。アニメであの截拳道の動きを再現した事にも感動したが、主人公が『水は早く打つ事も流れる事も出来る』と彼の思想を弟子に教えるシーンには鳥肌が立ったモノだ。

私はもちろんリアルタイムではない、彼が死んでから10年後に私は生まれてくる。だが、そんな私世代にも彼のすごさは映画から伝わってきたのだ。ブルースリーはいつの時代も永遠なのである。

『ドラゴン怒りの鉄拳』を観るが、やはり燃える。この作品ブルースリー終始怒り狂ってるのだあれだけ怒るのにはかなりのパワーがいるだろうが、冒頭からラストまで主人公が怒りっぱなしという作品もそうない。日本人が牛耳る時代の中国を舞台に師匠を殺されたブルースリーが犯人を探すというストーリーだが、そのストーリーに浮きまくる演出がウケる。バレないように変装したり、殺したヤツを電柱に吊るしたり、逃亡中は野うさぎ(?)を1人で焼いて、イライラした表情で喰う。こういうシーンの数々は真面目にやってるのだろうが、やはり異常に写ってしまい、笑いを誘うのである。

しかしこの時代のノラミャオは殺人的にかわいい。彼女はブルースリーの幼なじみで、恋人の設定であるが、中盤、墓場でブルースリーと背中合わせになって夢を語るシーンは今見ても泣ける。この作品は復讐劇であるが、ラストが非常に切なく、やるせない。復讐劇とはラストがやるせないものでないとダメだが、それはそういう事とは無関係にやるせない。この作品ではブルースリーが師匠を殺したと思われる相手、そしてそれに関わるヤツを片っ端から殺しまくる。復讐のためとは言えやはり人殺しはだめだ、現実に復讐なんてあったら、そこにあるのはもう1つの死である。あのラストはかなり有名だが、やはり復讐映画のラストはこうあるべきだ。こういう所もこの作品が人気の1つなのだろう。

笑って、泣けて、スカッとして、切なくなる。娯楽映画として実は完璧に機能している『ドラゴン怒りの鉄拳』久しぶりにビデオ屋に行って、手に取ってみたら?ねぇねぇ?