“小龍”の血を引く男
主演はブルース・リーの息子のブランドン・リー。後で調べて分かったのだがブランドンの初主演作なのだそうだ。監督は後に『フレディVSジェイソン』を撮ることになるロニー・ユーである。よく、キャッチコピーで“○○の遺伝子を持つ男”とか“○○を継ぐ男”とかあるが、ブランドン・リーは息子なので、コピーを付けるとか以前に彼は正真正銘のブルース・リーの遺伝子を持つ男なのであった。あちょー。
さて、ホントにホントにざっくりとストーリーを説明するが、とてもシンプル。ブランドンの友人がギャングの下っ端で、彼のためにブランドンが罪をかぶって服役するんだけど、実はそれは友人が仕組んだ罠で、それを知ったブランドンはその友人に復讐するのであった。めでたし。めでたし。
めでたし。めでたし。と書いたが、後味は結構悪い。血なまぐさいし、笑いもほぼ無い。シンプルに見えて、ブランドンを罠に落とし入れるところなんかは捻りが利いてて、おおっと唸らされたが、結局、プロットは古今東西のありとあらゆるクリシェをグチャングチャンに混ぜ込んだ印象も否めない。脱獄とかあったり、『男たちの挽歌』そっくりの衣装が出て来たり、ラストも『スカーフェイス』みたいだった。
特筆に値するのは徹底した説明の無さである。ギャングや悪徳警官などはまだいいとしても一番すごいのがブランドン自身のキャラクターだ。ブランドンは昼は解体業、夜は水商売のウエイターをやっていて、とてもケンカをするようなキャラではない。もっと言えばカンフーなんて出来そうにも見えないのだが、腕に覚えありみたいなキャラクターを簡単に叩きのめしてしまうし、様々な銃も簡単に扱う全身コマンドー男として登場する。ここまで来れば、前に軍隊にいただとか、特殊部隊に所属してたなんてことが出て来てもいいと思うが、なぜ彼がここまで強いのか、まったく説明が無い。
ジャッキー映画でも、カンフー道場の息子であったり、幼い頃にカンフーを習ってたり、刑事だったりして、格闘技に精通しているという説明があったりする。『レッド・ブロンクス』でも「カンフーはまだやってるのか?」なんていうセリフがあるくらいだ。ブルース・リーもしかりである。
ところが『ファイアー・ドラゴン』では「ブルース・リーの息子なんだから分かってるでしょ」と言わんばかりに、まったく説明がない状態でカンフーさせてしまう。しかもかなり強く、本人も自信満々に敵の相手をする。ありそうでなかった大胆な演出ではあるが、あまりに強いので何をやってたのか逆に気になってしまった。リーファンにとっては感涙なヤン・スエとの格闘シーンもあるが、あのヤン・スエをブランドンは数発でぶっ倒してしまうほどの強さなのだ。
そんな説明のない無敵の男ブランドンだが、アクションは無茶苦茶うまい。日曜洋画劇場で『ラピッド・ファイアー』を放送した時、淀川さんに「演技はイマイチだけど、アクションは父親譲りですねー。素晴らしい、素晴らしい」と言われるだけあって、キックの美しさや力強さはホントに父親譲りだと思った。特に指一本をグイっと差し出す仕草は、ブルース・リーの面影すら感じさせるほどにかっこ良かった。
まぁ、ストーリーのシンプルさや説明のなさは置いといても、アクションが見れればいいやと思っていたので、テンションがグッと上がったが、この『ファイアー・ドラゴン』という映画には致命的な弱点があった。なんとこの映画ではブランドン・リーのカンフーアクションがほとんど登場しないのだ。
ケンカ売られて、いよいよカンフーが見られるっ!と思ったら、まばたきしてる間にガツンと殴って終わり――――次に刑務所でいい感じに絡まれたと思ったら、またガツンと殴って終わり――――さらにラストで互いの銃の弾が無くなって、いよいよカンフーバトルかと思ったら、ガツン――――
全然長いカンフーシーンないじゃん!!!
ぼくはブランドン・リーの映画は『ラピッド・ファイアー』しか観たことなく、結構カンフーがいっぱいあったなぁという印象があったので『ファイアー・ドラゴン』のカンフーの無さには驚いてしまったし、正直ガッカリしたが、それでも、ブランドン・リーという男の魅力は充分に伝わったので、荒削りだが、これはこれで良しとしよう。ブルース・リーの息子だしね。まぁ、息子も死んでるんだけど。
てなわけで、これから『ラピッド・ファイアー』も『クロウ』も探してみようと思うのであった、ちなみに遺作となった『クロウ』の原作は古本屋で100円でゲットしたのだ。ちゃんと読んでから観るよ!あういぇ。
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