みんなから観ろ観ろ言われ続けた『SAW』をようやく観た。

帰ってすぐに『ソウ』観賞。おもしろかったのかな?いや、おもしろかった。1時間40分すごく引き付けられた、時間の使い方も無駄じゃなかった。ハッキリ言って時間経つのは早かったし、暇つぶしと考えればかなり良い作品だろう。ただ、それ以上のツッコミどころと謎がありすぎて、『いやぁおもしろかったなぁ!』とならなかった。『CUBE』や『セブン』が引き合いに出されてるが、私は『CUBE』よりは好きかな。傑作だ!という器じゃないけど、おもしろかったですよ。アイデア一発もんとしては。作り手のやりたい事も分かるし、役者の演技も素晴しいし、新しい才能に満ち溢れてますね。まぁでもやっぱり『テープ』や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の方が感動したかな。

低予算なのは出てる役者で感じるのだが、作りはしっかりしていて、金のかけどころを分かってるような映像は見事。1時間40分すごく引き付けられたし、時間の使い方も無駄じゃなかった。そういう観点から行くと上出来な作品と言っていいだろう。冒頭の撮り方はしっかりカメラも動いて、カット割りもしっかりしていて、独特のリズムがある。そこに薄気味悪さもあって、役者も無名だから、どうなるかわからない。ここの演出、リズム、進め方は実に見事。部屋のビジュアルも言う事無し。パイプの錆び方や鏡なんかは『バイオハザード』や『サイレントヒル』(ゲームの方ね)からの影響は大だろうし、便器に手を突っ込んで探すというのも『サイレントヒル2』のまんまだ。犯罪をゲーム仕立てにしているが、ゲーム世代の監督なのは映像を見れば明らかである。

ドンデン返しの畳み掛けという点では『ワイルド・シングス』よりもすごい。急転直下の展開について行けなかった人も多かったようだが、何が本当で何がウソなのか、コロコロ変わって行くのについて行ければ楽しめるだろう。

ただ、個人的に気になったのはカットバックの使い方。はっきり言って多すぎる。あの限定された部屋の中がストーリーの軸なのだから、それをメインに話を進めて、それ以外のシーンはもっと交通整理させなけばいけない。タランティーノは一部で演出がヘタだとか言われているが、『レザボア・ドッグス』は時間軸もずれてるのに、カットバックが少ない。しっかり倉庫の所は倉庫。時間軸のズレはテロップまで出して、一気にそのシーンだけ見せきる。だから脚本はごちゃごちゃしててもしっかりと観客をラストまで混乱させずに導いてる。

『ソウ』は例えば言葉だけでも突っ走れるシーンをわざわざ映像にしている。たしかに説明する事をセリフでやると、リアリティがなくなるので、方法論としては正しいのだが、それにしても映像がくるくる変わる事をやりすぎている。カメラを振り回すとか、カットを割りまくるというのはいい。だが、しっかりとレールを敷いてあげなければ、分かりにくい。

そして、「片足を鎖で繋がれた男が死体を挟んで対峙している」という絵にこだわりすぎて、それを映画の中で本当にあった事として見せたのも惜しい。『CUBE』の様に、不条理な物、それはもうそういうもんだと決めつけてる様な方向性でもよかった気もした。まぁこれは個人的な嗜好なので、問題はないのだろうが、1つのウソがでかすぎて、他のウソではカバーしきれてないのが辛い部分だ。







ここからネタバレツッコミ。観た人は読んで下さい。








『セブン』は猟奇殺人ですけど、素人にも出来る範囲でしょう。スパを喰わせまくったりとか、まぁミイラは無理があるけども、やれない事はない、だからリアリティがある。『ソウ』は、他に起こした犯罪が浮世離れしすぎてるんですね、なんか首がぶっ飛ぶような仮面つけたり、部屋に針金とかつけまくったり、数字を山ほど書いて、火をつけるとか、コンピューター使ったりとか、とても1人じゃ出来ない様なものばかり、絶対に雑用係のヤツと二人で作ってたでしょう。だから本作でメインになってる「片足を鎖で…」っていう部分が浮く。1番地味なヤツがメインならば、他のゲームのヤツは1つくらいか、同じもんにしてくれるとありがたい。もうすごいっすよ。他も意味分かんなくて、たとえばなんで病院の雑用があんなに執拗に強くて不死身なのか?なぜにコンピューターに詳しいのか?まぁ自分の命もかかってるから、必死で覚えたり体鍛えたりしたんでしょうねぇ。脳腫瘍のヤツももうすぐ死ぬのに、いつ病室を抜け出したん?それだったらよう、刑事にも同じ病院で失踪した患者がいたんですよって調べがつくだろうが!しかしあの刑事もやめてから体ガタガタやん。ただの雑用係にやられてるもん。アダムはなんで目が覚めてから、すぐに相手の医者の事を知らないフリをしたんだろう?あんな状態でどうやって連れて来られたかもわからないくせに、よくそんな芝居が出来たな!っていうか、最後まで寝てたお前!どうやって雑用係にバレないように死体になったんだよ!









ネタバレ終了。










だが、低予算を感じさせない雰囲気作りは素晴しいし、役者の演技も極限を見せてて見事、なんだかんだ言いながらも楽しめた。暇つぶしには最高の1作である事は間違いないだろう。