『ジャンパー』と『ガチ☆ボーイ』

10時に起きて『ジャンパー』鑑賞。あの超傑作『ボーン・アイデンティティ』を作ったダグ・リーマンの新作。主演にアナキン・スカイウォーカー(うおーホントにアナキンにしか見えないYO!)『ドラゴンボール』の瞬間移動を実写化したような話。

この手の映画はだいたい流れや設定が決まっていて、

主人公は基本的にボンクラ。

子供の頃に能力を身につける。

子供の頃から好きな女の子が居て、振り向いてもらえない。

能力を使って自分に自信がつく。

大人になって能力に磨きがかかる。

子供の頃に振り向いてくれなかった女の子と付き合う。

敵が現れる。

彼女がピンチに!

敵と戦う。

彼女を救う。

敵を倒す。

んで、ハッピーエンド。

って感じなんだが、この『ジャンパー』も基本的にこの流れ(笑)ただ、この手の映画はだいたい2時間コースだが『ジャンパー』は非常に短くて90分しかない(笑)

おもしろいと思ったのは瞬間移動の映し方。水の中から移動するとかはさすがにCGを駆使してるとはいえ、基本的にはジャンプカットを使っている。

ジャンプ・カットというのは59年にゴダールが『勝手にしやがれ』の中で使った手法。連続するシーンの間をカットして、1つのシークエンスがジャンプしたように見せる。例えば左から右に歩いてくる人が映ってるとして、真ん中くらいを切ると左から右に飛んだように映る。これはハリウッドでは禁じ手とされてた手法だ(ハリウッドでは失敗とか素人仕事とされてた)連続するシーンから、いきなり真ん中を抜いたら意味が分からなくなる。

勝手にしやがれ』では車を運転するシーンで使われ、ポンポンシーンが飛ぶもんだから、運転している背景がコロコロ変わってしまうのだ。上映時間が長く、短くしなきゃいけなかったのだが、ゴダールはシーンを丸ごと切るのではなく、シーンの中で長いと感じる部分をカットした。これは苦肉の策だったのだが、これがスタイリッシュな効果を生み、(えっらそうな評論家は「独特の静止/運動=映画におけるリズム」とかぬかしてるけど、ただかっちょよかっただけだよ!)その後の映画ではこのジャンプ・カットが当たり前になった。ゴダールも『女と男のいる舗道』でマシンガンの音に合わせ、ジャンプ・カットを進化させているし、ルイ・マルも『地下鉄のザジ』で効果的にアニメのような動きを見せた。

日本でも黒沢清堤幸彦がジャンプ・カットを好んで多様し、『池袋ウエストゲートパーク』では池袋の街並をすべてジャンプ・カットで移動するという荒技までやってのけている。

『ジャンパー』で自分の部屋の中をテレポートして進むというシーンがあるが、ここはジャンプ・カットという超アナログな手法(もしくはそれを意識したCG合成)で映されている。

ここからはすんげぇ憶測で物を書くが、きっとダグ・リーマンは、

時代が進んで、革新的な映画がたくさん出来ても、

ゴダールの映画は時代をジャンプして、俺たちの世代にも衝撃を与えてる。

と言いたかったのではないかな(別にダグ・リーマンが言ったわけじゃないよ!妄想だよ!得意の妄想!)

『ジャンパー』はストーリーはベタ中のベタだが、映像は一級品だ。何よりも元々失敗だとか素人仕事と言われて来たジャンプ・カットをここまで突き詰めて、ストーリーに組み込んで映画として見せ切る作品が今まであっただろうか。

私はそれだけでも『ジャンパー』を推す(それだけかよ!)

もうハッキリ言うが『ジャンパー』の後半はグダグダで主人公の考えや行動に納得いかない。映画自体も取ってつけたような結末と尻切れとんぼな終わり方だ。設定の説明なども一切無い。

でも、ジャンプしてスフィンクスの上に座ったり、9メートルの高波につっこんだり、ビッグベンから街を見下ろしたり、映画にしか出来ないマジックがある。

だから『ジャンパー』は『バンテージ・ポイント』と同じように、映画館で楽しむべき映画だが、しっかりスクリーンを凝視しなければならない後者と違って、中身からっぽな映画なので、

レイトショーかなんかで入って、売店でビール買って、グイとひと飲みしてから鑑賞して、90分後にトイレに駆け込むって感じで楽しむべし!

観終わってマックに行って、チキンなんちゃらとハンバーガーを喰らった。

12時から『ガチ☆ボーイ』鑑賞。

予定調和で作り手の都合がいいように作ってあって、

ベタなギャグも泣かせようとする演出も見え見えで、

熱過ぎる演技ばかり集めて、学生プロレスというだっさいもんにスポットを当てて、

気を衒った演出もひとつもなく、バカみたいにストレートなのに、


なんでこんなに泣けるんだ!?


『ガチ☆ボーイ』は映画への愛に溢れている。

1800円払ったお客さんをしっかり満足させてやろうというサービス精神に溢れている。

スタッフもキャストも一丸となって、良い物を作ってやろうというエネルギーが満ち溢れている。

描き切ってない部分も納得いかない部分もダメダメな部分も全部吹き飛ばす映画的興奮の塊!

奇を衒ってないガチな演出とバカみたいにストレートな描き方に号泣!

後半、オレ、ずっと泣きっぱなしでしたっ!

血も首チョンパも反モラルな思想も出ない娯楽映画観て幸福感に包まれたのは『ハッピーフィート』以来か?制作者と監督と役者のみんなに心からの拍手とありがとうを送ります!

『ガチ☆ボーイ』大満足です!今すぐ映画館へGO!

損はさせませんよ!

帰って、あまりにいい天気だったのでチャリンコで駅の近くにあるジュンク堂という本屋に向かう。

蓮實重彦の本を探しに来たのだが、オレの欲しいヤツだけ無いってどういう事!?

『表層批評宣言』も『映画に目が眩んで』もない!

小津安二郎の本と成瀬巳喜男の本があって、買おうと思ったけど、それだけでDVD買えちゃうのでやめた。でも小津安二郎のヤツは文庫もでてたんだよね。やっぱり図書館かなぁ。あういぇ。