最も危険な遊戯

最も危険な遊戯 [DVD]

最も危険な遊戯 [DVD]

政界の大物が次々に誘拐され、殺されるという事件が発生。そんな中、東日電気の社長・南条が誘拐された。南条が誘拐された事で殺される事を悟った会長が、殺し屋の鳴海昌平に南条救出を依頼する…

松田優作の魅力が爆発してるだけでなく、アクションの切れ味も抜群。和製ハードボイルドというだけあって、人物描写を潔くカットし、行動だけで人間を描いている。コミカルなシーンもあるが、ムードな音楽にドライなタッチのヒリヒリした和製アクション映画だ。

松田優作の魅力がとにかく爆発している。ファッションだけでなく、彼の一挙一動から目が離せない。アクションもダイナミックにこなし、全編をシリアスにクールに演じきっている。彼のための役だったと言っても過言ではないし、彼じゃなければ成立しなかった世界であろう。

おすぎは松田優作について、こういう風に言っている。「彼はとっても気さくな人で映画を見るとそれがすごくギャップに感じるのよねぇ、そんな事感じちゃいけないんだけど」つまり、彼にとってこういうクールな役というのは素とはかけ離れたものだったのだろう。それをまったく感じさせずに、THE・松田優作に思わせる入れこみっぷりが見事だ。

そんな松田優作の魅力を完全に捉えたのが監督の村川透松田優作のダイナミックな演技を余す所無く、カメラに収めている。なぜ余す所無く収める事が出来たのか?

『最も危険な遊戯』は全編緊張感に溢れた作品になっている。セリフだけでも息が詰まるようだ。映像的にはお金もかかっていないし、サスペンス映画でもないのにだ。見ていてどんどん引き込まれるし、ドキドキする。映画を見て行くと分かるのだが、『最も危険な遊戯』は全編ワンカットが長い。もっと言うと長回しを多様している。

単なるセリフのやりとりも長回しのため、非常に緊張感に溢れている。相米慎二オーソン・ウェルズのようなクレーンを使った長回しではなく、手持ちカメラが多いため、彼らの生活や事件そのものを覗き見してるかの様な感覚がある。クレーンを使って優雅に長回しすれば、映画である事を感じ、そっちの興奮があるのだが、普通に長回しをすると、シーンが始まった途端に、息が詰まるような緊張に包まれ、カットが変わると緊張が解ける。

特にそれが一番効果的だったのは、主人公が敵のアジトに乗り込むシーンだ。

アジトに乗り込んだ瞬間、敵を撃つ、ひたすら撃つ!そしてドアを開け部屋に入る。入っても…カットが変わらない、とにかく変わらない、部屋から出て来ない、優作が出て来ない!同じドアから出てくる優作。優作は走る、敵を撃ちながら、階段を駆け上がる!ガラスは割れ、弾着は弾け、優作自身も切れ味のいいアクションで演じきる!実質何分だったのだろう。ホントにすさまじい長回しだ、ここは誰が見ても一番印象に残るシーンだ。

後半になるともうリアリズムもクソもなくなるから、アクション映画としての興奮もあり、娯楽映画としても一級品。金をかけなくてもおもしろい映画は作れるという良い例だろう。それがアクション映画なのだから驚く、日本もまだまだ捨てたもんじゃないな(笑)

強烈な個性を放つ松田優作自身の空手やスタントアクション、人間関係どころかすべてがドライな演出、松田優作だけじゃなく、ハードボイルドなアクション映画としても見応えある傑作である。