ネズミが飯を作るというのはどうなん?

レミーのおいしいレストラン(以下、レミー)』鑑賞。

ピクサーの前作『カーズ』は未見だが、私の知り合いの評価も高く。マイミクさん達もこぞって絶賛するという作品だった。ピクサー社の映画には外れがなく、映像のクオリティと共に作品の質も極めて高いという、なんたらブラッカイマーというバカにも見習わせたい作品群なのだが、

今回の『レミー』もピクサーブランドの名に恥じぬ良作であった。ネズミが出来の悪いシェフと手を組んで、評価の下がったレストランを建て直していくという、今までにあったクリシェの組み合わせのような作品だが、これが実にバシバシと決まり、

ぶっちゃけ後半はずっと号泣しっぱなしだった。泣けるレベルではなくて、号泣。ただ、あれだけ号泣したのは世界広しと言えども私くらいなもんだろう。きっと周りのガキどもは引いたに違いない。こいつどうしたんだろう?的な(笑)

家族愛あり、アクションあり、作り手の評論家に対するメッセージあり、友情あり、人間の薄汚い部分ありと、あいかわらずのサービス精神っぷり、ここまで来ると本当にお客さんに楽しんでもらおうという事に徹底していて小気味いい。

フランス料理と並べるのはどうかと思うが、同じ様な職種に携わってた人間として感動したのは、キッチン内の描写である。物の位置、指示の出し方、クソ忙しい時の動き、もうそのまんまという感じ。もちろんリサーチもしただろうし、想像で補った部分もあっただろうが、こういう土台がリアルであるから、ネズミが出て来ようが、人間が妙な動きをしようが、アニメである事を忘れてしまう。

確かに、結構べたな演出もあるし、こういう風に進んで行くんだろうなぁという予測もついたが、映画というものを分かりきってる様な構成と抜群の安心感こそが『レミー』の魅力。

個人的にはツッコミどころも満載で、冒頭のショットガンなんかは笑うしかないし、やっぱりネズミが飯を作るのはいけないと思うが、こういう見せ場に持っていこうという作り手の事を考えれば、『パイカリエンド』なんかよりもずっと素直で嬉しい。しいてマイナス面を言えば人物描写の無さくらい。いかがわしいシェフ達も最終的にはいきなり消えるし、まぁネズミが主人公だから、いいちゃいいのかもしれないけど。

ピクサーが好きで観に行こうと思ってるならば観て損は無いと思われる。ただ、『モンスターズ・インク』や『Mr.インクレディブル』『ファインディング・ニモ』を期待すると、派手さは無い分、肩すかしを食らう感があるかもしれない、でも上質なエンターテインメントだ。

あ、吹き替え版で観たのだけれど、エメットさんが指摘してる通り、佐藤隆太がホントにヘタクソでした。ちょっと、それで引いた事は否めない。あういぇ。