再び『キル・ビル』のお話


10時くらいに『キル・ビルVol.1』鑑賞。私はタランティーノのせいで映画好きになってしまった人だが、彼の作品の中で一番好きだ。1番観てるのは『パルプ・フィクション』なんだけど、特に歳を重ね、さらに観れば観るほど『キル・ビル』を好きになっていってる。

最近『スキヤキ・ウエスタン』も公開されてるが、こういう映画の中で映画を再評価するような作品は好きだ。もちろんマカロニウエスタンからの影響は大なのだが、セルジオ・レオーネも『ウエスタン』で、過去の西部劇の名作の引用を山ほどやり、さらに自分のカラーで染め上げるという事をしている。歌に例えるならば、現在売れてる有名な歌手が、昔の知られざる名曲をカバーして、再評価させるのと一緒だろう。

私は『パルプ・フィクション』と『レザボア・ドッグス』によって映画好きになってしまった。何故かというと、タランティーノは映画のシークエンスや衣装など、ありとあらゆるところに引用があり、タランティーノにハマったせいで、その元ネタを知るために様々な映画を観てしまい、そこからゴダールジョン・ウー、スコセッシなどを知って、映画にズブズブとハマって行った。

タランティーノカンフー映画やマカロニ、日本のプログラムピクチャーが大好きな事は知ってたから、いつかは『キル・ビル』のような映画を作ると勝手に思っていた。だが、タランティーノが『パルプ・フィクション』の次に撮ったのは『ジャッキー・ブラウン』で、演出もすこぶるうまく、物語の運びや無駄なシーンの使い方など、かなり大人っぽい、円熟した手腕を見せつけた。好き嫌いは別にしても『ジャッキー・ブラウン』がタランティーノの最高傑作である事は間違いないだろう。

私は『ジャッキー・ブラウン』を観て、嬉しさと哀しさを同時に覚えた。もうタランティーノはこういう落ち着いた映画しか撮らないんじゃないかと…

そんな中、プレミアという雑誌に飛び込んで来たのはトラックスーツを着て、日本刀を構えてるユマ・サーマンの写真。タイトルは『キル・ビル』あの時の感動は昨日の事のように覚えている。私はこの写真を観て、勝手に『キル・ビル』を傑作扱いしていた。頭の中でいろんな妄想をした。

ショウブラのカンフー映画や『子連れ狼』が大好きだった私はそういう映画をごちゃ混ぜにしたという話しを聞いただけで、観たくて観たくてたまらなかった。それだけじゃなく、トラックスーツにカトーマスク、千葉真一も出ると聞けば、是が非でもどんな映画になるのか知りたくなる。さらにはプロダクションI.G.のアニメまで入るというではないか!

私は公開日の初日に劇場に行った…そして自分の予想を上回るとてつもない傑作だった事に喜びを隠せなかった。ホントにすぐにでもDVDを出して欲しかった。全シーンがツボで、日本語のシーンに腹の底から笑い、100人斬りに感動した。とにかく人生のベスト10に入るどころの騒ぎじゃなかった。何度も何度も観たい映画に遂に出会ってしまったという感じだった。

その後、当然の如く、元ネタ探しに躍起になり、『修羅雪姫』『吼えろドラゴン』『吸血鬼ゴケミドロ』『片目と呼ばれた女』などのDVDを買いあさり、過去に観た『直撃地獄拳』や『子連れ狼』『大酔狂』なども見直した。

確かに『キル・ビル』はこれらの映画をちょっとなぞっただけに過ぎず、演出もヘタだし、アクションもガタガタだし、普通の感覚を持ってる人ならば『なんでこんな映画を公開したんだ?』というレベルだろう。

キル・ビル』に取り込まれた映画は確かに普通の人から観ればくだらないものだ。映画の中で映画を再評価する事を信条として来たタランティーノの作品の中で確かに『キル・ビル』は浮いているだろう。だが、私はあえて、そういう映画を一般の観客に提示し、なおかつその元ネタにまでスポットを当てた『キル・ビル』は、やっぱりすごい映画だと思うし、そういう事を平気でやってのけるタランティーノを心から尊敬する。

ちなみに『Vol.2』はそこまで好きではないです。やっぱり『Vol.1』ですね。まぁ2本で1本の映画だし。

そう言えば、『デス・プルーフ』がとても観たかったのですが、次の休みには終わってしまうようです…だからロドリゲスの方しか観れません!くそー!!!!タランティーノの方が観たいってのに!!!

追記、画像は高橋ヨシキさん制作のちょーかっこよすぎるポスター。マイミクになっていただいたのだが、日記もすこぶるおもろい。