『ショーン・オブ・ザ・デッド』と『ゴジラ対へドラ』
『ショーン・オブ・ザ・デッド』鑑賞。
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- 発売日: 2004/12/22
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パロディとして作られた物が正統な物と同等な評価をうけるという意味では、『ロング・グッドバイ』などがあり、それのゾンビ版が『バタリアン』だが、ハッキリ言って『ショーン・オブ・ザ・デッド』は『バタリアン』を遥かに凌駕する傑作で、これ観て何も感じないヤツは映画観るな!とハッキリと言ってやりたいほど出来が良過ぎる!
パロディとして作られてるのだが、パロディというの元ネタがあって、それは見る人全員が知ってなきゃいけないという暗黙の了解のようなものがある。だから『最終絶叫計画』や『ホットショット』などは、ああいう作品になる。オマージュはちょっと分かりにくい部分を引用し、引用しましたと公言しなければならない。
ところが『ショーン・オブ・ザ・デッド』はパロディとリスペクトとオマージュが渾然一体となり、底知れない『ゾンビ』愛によって包まれてるため、オリジナルと化してしまった珍しい作品だ。実際、『ショーン・オブ・ザ・デッド』は『ゾンビ』のパロディであるはずなのに、『ゾンビ』とはまったく違うおもしろさに包まれた作品だ。
舞台はイギリス。主人公はボンクラは男で、もっとボンクラなニートデブと一緒に住んでいる。いつまでも大人になれず、母親にも完全な子供扱いされてるので、恋人は愛想をつかして主人公をふる。失恋して、自暴自棄になり、飲んでダラダラ過ごす主人公。翌朝、外の景色は一変する。ところが、主人公はいつもと同じ朝のようにボケボケした頭で買い物に行き、事態には気付かない…
まず『ショーン・オブ・ザ・デッド』がおもしろいのは舞台をイギリスにしてるところだ。単純に銃を撃つシーンがほとんどない。さらにイギリスではどでかいスーパーではなく、パブに立てこもる(笑)だが、決定的に違うのはそれくらいで、後はほとんど正統なゾンビ映画の世界を踏襲している。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』はそれだけでなく撮影も素晴しい。冒頭の短いカット割りで主人公達の関係性を一気に説明。さらに近くのコンビニまで買い物に行くシーンが長回しで、その後、ゾンビに襲われた時、同じ長回し、同じカメラの動きで長回しして、主人公がどれくらい間抜けなヤツか映像だけで見せ切っている。ガイ・リッチーやサム・ライミ、『死霊のえじき』と同じ編集やカメラも出て来てなかなか笑わせる。
パロディと書いたが、しっかり泣けるシーン、切ないシーンもあって、残酷な描写にも抜かりはない。もちろんパブに立てこもった後のアクションはものすごく迫力がある。ロメロの『ゾンビ』映画ってのはホントに切なく、泣けるもので(実際妹は『ゾンビ』で泣いてる)そういう『ゾンビ』フォロワーがしてこなかったものをしっかりとしてるのが偉かった。まぁ、私は『ショーン・オブ・ザ・デッド』で号泣したけど(笑)
ラストはゾンビ映画らしからぬ驚きのオチが待っていて、『死霊のえじき』でやろうとした事が起こっていて驚いた。いやぁ、とにもかくにも参った。これは今年のオールタイムベストに入るな。傑作です。大傑作。絶対に観る事!
その後に『ゴジラ対ヘドラ』鑑賞。
- 出版社/メーカー: 東宝
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元々、今までのゴジラと違う物にしようというプロデューサーの考えで監督を変えたらしいが、それよりも何よりもヘドラという公害から生まれた怪獣が執拗に怖く。人間をぶっ殺しまくって、公害を起こした人間への警告がストレートなメタファーになってる。
特に核実験の放射能を象徴したゴジラと公害を象徴したヘドラが地球で戦うというのも意味があるし、ヘドラは倒しても、倒しても、何回も蘇ってくる。ゴジラも1回へドラにやられる。つまり『ゴジラ対ヘドラ』は「核実験の放射線も怖いけど、それよりも当たり前に起こって、止められそうにない公害の方がもっと怖いんだよ」という映画になってる。実際、ラストのワンカットも底冷えするくらい怖い。これ子供が観たらトラウマになると思う。
さらに当時の若者文化も出て来て、いきなり冒頭でサイケな映像が出てくるところもすごい。麻薬でラリってるシーンとか、どうやって親は子供に説明したんだろう??