そつなく65点『世界侵略:ロサンゼルス決戦』

『世界侵略:ロサンゼルス決戦』こと『バトル・ロサンゼルス』鑑賞。

『ゾンビ』のようにある日突然宇宙人とおぼしき生命体が何の前触れもなく地球に攻めこんできた。ロサンゼルス一帯を空爆で一掃するため、爆撃までにその地域に残されてる市民を助けにいくことになった軍隊の視点で物語が進んでいく。

公開前から宇宙人による地球侵略をテーマにしている『スカイライン』と比べられていたが、ふたをあけてみると、なんてことない、こちらは『ブラックホークダウン』風味で描かれる海兵隊のゲリラ戦。『スカイライン』が『宇宙戦争』だとすれば、『バトル・ロサンゼルス』は『プライベートライアン』というくらい映画のテイストがまるで違う。

ストーリーはほぼないに等しく、登場人物の人となりをざっと説明したあとはひたすらラストまで戦場に投げ込まれる。プロットは「一難去って、また一難」の繰り返しなのだが、その「一難」が常に「絶体絶命」の危機であり、毎回「こんな状況でホントにこいつら生き残れるのか?」と気が抜けない。空には宇宙船がバンバン飛び交っているものの、それはネギひとつまみの薬味程度であり、基本的には歩兵隊である宇宙人とひたすら撃ち合うだけの絵面が続いていく。さらに敵の罠にはめられ、待ち伏せされていたところを一斉に撃たれるなど、イラク戦争をそのまんま宇宙人とやってるだけとも言える。

おもしろいなぁと思ったのは、この手の映画において、宇宙人を「エイリアン」呼ばわりすることは禁じ手だったが、平気でキャラクターたちが「あのエイリアンは」とか「E.T.」とか呼んでいたところ。ゾンビ映画において、ゾンビのことを「ゾンビ」と呼ぶのはダメだと『ショーン・オブ・ザ・デッド』でもギャグにしていたが、意外とその辺は現実の地続きの世界観だったと言えよう。ちなみに『ゾンビランド』ではゾンビと呼んでいたっけか。

さて、この作品。戦場を描くことだけに命をかけているきらいがあり、制作費はほとんどそれに消えていると言い切れるほど良く出来ている。プロットは一難去って、また一難だけだが、その「一難」のアクション演出は意外と独創的で見せ方はうまく、まったく景色の変わらない映像を飽きさせないように工夫してある。冒頭は『ブラックホークダウン』的なゲリラ戦、中盤からは一人の男が特攻隊のような活躍を見せ、市民と合流してからは、彼らを守りながら、高速道路での撃ち合い、さらに潜入した地下でのバトルに、ド派手なクライマックスと息も付かせない。特に前線基地に着いてからは、男泣き必至のシーンが続いて行き、クライマックスに一番のピークを持って来てるあたりも計算されている感じだ。

役者で言えば、トゥーフェイスことアーロン・エッカートが過去に部下を亡くしてしまった二等軍曹を好演。正直、Ne-Yoはよく分からなかったが、ミシェル・ロドリゲス演じる実戦経験のない技能士を見れるだけでもサムアップなのではないか*1

というわけで、展開もストーリーもセリフも捻ってなくて王道中の王道、端から冒険せず100点満点中の合格ラインである65点くらいをそつなく狙いに行った感じで楽しめる作品。レイトショーでビール片手に楽しみたい。そんな映画であった――――と思ったら『スカイライン』でも同じ感想を書いていた。あういぇ。

*1:最終的に男勝りの活躍をするのはあいかわらず