『ゾンビランド』という名の見るテーマパーク

『ピラニア3D』をUK盤BDにて鑑賞……と本来ならなるはずだった。

水着!!ナイスバデーのちゃんねー!!ひょー!!!!

観たくて観たくてしかたなかったが、何気なしにAmazon.UKを眺めていたら、BDがものすごく安かったので酔った勢いで1-Click購入した。

BDは3Dバージョンと通常バージョンの二枚組!しかも昔なつかし赤と青の3Dメガネ付き!

土曜の昼過ぎに届いたのだが、奇しくもその日は20時から深夜3時までバイト!次の日が休みだったので、その日の昼にでもビール飲みながらゆっくり観ようかなぁと思いシールドを外したが、結局我慢出来ないということでその日のうちに再生機にセット。座椅子に座って毛布をかぶって待っていたのだが、一向に本編が始まらない……

――――あ、そうか、ぼくは間違って3D対応の方を入れてしまったのかなと、もう一枚のディスクをセットする。ワクワクしながら待っていたが、これまた一向に再生される様子がない。

――――おかしいと思って、パッケージを見てみたら、驚愕の事実が………

リージョンB!!!!

うわー!!!!やらかしたぁぁぁぁぁ!!!!!!!


――――――――ということで一週間近く待って観れず、さらに1000円ちょっとを無駄にしてしまった喪失感を埋めるべく『ゾンビランド』をレンタルDVDにて鑑賞。新潟では二週間限定で公開されたが、一週間過ぎたら、中途半端な時間にしか上映してないというナメた態度を取られたので見逃していた。

いわゆるひとつのゾンビ映画。オタク青年が自身のルールにしたがって行動した結果、ゾンビだらけの街で生き残ることに成功。故郷に帰る途中たまたま出会った屈強なゾンビハンターと共に旅をするというのがあらすじ。

基本はコメディタッチで分かりやすいが、ゾンビ映画の定石をしっかりと守りつつ、それをパロディにしたり、笑いにつなげたり、さらに逆手にとってプロットにフックをきかせたりとなかなか凝った作り。申し訳程度のラブストーリーや泣かせるようなシーンなどもふくまれているが、血が噴きだしまくる激しいバイオレンスや人体破壊など、ゾンビ映画ファンにも納得のいくような本格仕様。頑固一徹老舗の味を誰もが食べやすいようにと、弟子が店の名をもじって勝手に出店したかのような快作に仕上がっていた。

全体的にトーンは軽めで、『マトリックス』以降の影響をモロに受けたようなモーション感覚を駆使した演出はかなりチャラいが、これがゾンビ映画にはなかったテイストで新鮮味があり、特にスローモーションでゾンビだらけの街をとらえるオープニングはザック・スナイダーの『ウォッチメン』に匹敵するかっこよさ。アクションは広い画角で全身を映しワンカットで処理していて好感がもてるし、他にも「ゾンビ世界で生き残るには?」というルールがあちらこちらに文字となって画面に登場する演出も楽しく、中盤に出て来る大物ゲストもノリノリで本人役を演じており、それを軸にした緩急の付け方も、一難去ったあとには休息というゾンビ映画の基本に忠実。

個人的におもしろいなぁと思ったのはこの手の映画では禁じ手である「ゾンビ」という単語を平気でキャラクターに言わせているところ、その辺も含めてゾンビ映画というのはこのご時世に三回転半くらいしてまったく新しい物に進化しているのかもと感じた*1

ディズニーランドというテーマパークがあるように、なにがしランドという言葉にはなにやら楽しいモノが待っているということを予感させてくれる。この作品はずばりタイトル通り“ゾンビランド”という見るテーマパークのようであった。

楽しい映画であったが、基本的には竜頭蛇尾で、遊園地でのクライマックスが冒頭に比べてあまり盛り上がらなかったり、主人公が自分に課してるルールが山ほどあるわりにそれが全部伏線になってるわけではないので、その辺も全部回収してくれたらなぁと思わなくもない(お菓子ネタも同様)。ジェシー・アイゼンバーグ演じるオタク青年がストーリーテラーだが、彼と関係ないキャラクターの回想を彼自身がするなど、文法的におかしいところもあって、特出しているところは特出しているのだが、全体的に完成度が高いとは正直言いづらい。それでもこういうホラーとコメディが同居した本格ゾンビ映画というのはなかなか作られないし公開もされないので、全力で応援する所存である。もう犬がどうしたとか、余命いくばくもない妻の映画なんて――――(ry

というわけで、ゾンビ映画が苦手な人にもおすすめの『ゾンビランド』は絶対に必見。ただしレンタルDVDだと映画が始まる前に予告編が30分近くあるのと、特典の髭男爵ゾンビランド解説があまりに酷いので、BD買ってもいいのではないかと、あういぇ。

ゾンビランド [Blu-ray]

ゾンビランド [Blu-ray]

PS.『ピラニア3D』は結局US盤をすぐに購入しました。最初からこうすればよかったんだよね、だっしゃっしゃ!
http://www.fantasium.com/detail.phtml?ID=HOR76938&PHPSESSID=6b331e1892f7fb5500d2b44c726b54a3

*1:ゾンビ映画の中でゾンビはゾンビと呼ばれないというのが基本。エドガー・ライトはそれを逆手に取り『ショーン・オブ・ザ・デッド』でギャグにしていた