史上最も長いゾンビもの『ウォーキング・デッド』

ウォーキング・デッド』を6話まで鑑賞。シーズン1になるらしい。

最近、海外の安いBDを探すというのがライフワークになっているのだが、その中で、「ゴーストタウンになった街を馬に乗った保安官が行く」というなんともハイコンセプトなティーザーを目にして、これは!と思い、早速調べたら、海外ドラマのゾンビものであることを知った。

この画!なんて分かりやすくかっこいいのだろうか!

BDには6話まで収録されており、円高であることも手伝ってか、なんとAmazon.comで買えば2000円しないという驚異の値段で、思わず買ってしまおうかなとTwitterにてつぶやいたらid:doyさんに日本語字幕付きのヤツを貸してもらえることになった。ホントにありがとうございます。日本ではスカパーかなんかで放送されたらしい。ちなみに『ムカデ人間』もそのときに借りたのだった。ちゃんとお返しします。あ、でもリビングで観てたら妹が「何これ!?ちょーおもしろそう!観たい!」と言い出したので、もう少しお待ちください。私信。

ストーリーは至極単純。ある日、ゾンビに支配された世界で、昏睡状態に陥っていた主人公の保安官が目を覚まし、家族を捜して、ひたすら旅を続けるというもの。

冒頭、ゾンビ化した子供の頭を銃でぶち抜くという衝撃的な映像を見せつけることにより、これは凡百のテレビドラマとは一線を画しますよという所信表明をする。最近この言い回し好きね。刻印を押すでもいいね。レトリカルね。かっこつけてるね。

ゾンビ映画とはこういうものである」という文体がロメロ*1御大のおかげで世界中に知れ割っており、冒頭から1nanoも説明がないままゾンビが登場し、そこからはノンストップ。

「あの」フランク・ダラボンが製作総指揮で自ら監督してる回もあってか、相当にクオリティの高いドラマに仕上がっており、気合いの入った残酷描写は、CGと特殊メイクを駆使してかなり作り込まれている。ゾンビ映画のフォーマットに落し込みながらも、ドラマで長時間にわたって描く必然性があるように人間関係の部分を強く意識し、途中から二人称で舞台が二つに別れ、それを同時進行させるなどプロットは練りに練られている。ゾンビ映画といえば緩急が重要だが、デパートなどに行って、ユートピアになったと思ったら、結局そこも離れなければいけなくなるという展開もしっかり守っている。

『24』ほど制作費はかかってないように見えるが、そのバジェットの組み方も含め、あえてスカスカ感のある映像を軸にするなど、かなりロメロのゾンビ映画をリスペクトしているのが伺える。ゾンビを大量に出すところは出して、それ以外では閉塞的な絵の中で人間が罵り合うなど、まるで『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』や『ゾンビ』を観ているようであった。

作品自体は『28日後』や『マッドマックス2』にオールドなロメロゾンビが合体したようなテイストであるが、ゾンビが銃で撃たれるとスローモーションになったり、銃の突きつけ合いが頻繁に起こったり、クレーンで下から上にカメラが移動するとその先の風景が見えるなど、ペキンパーとレオーネの西部劇を強く意識した演出も見られる。実際馬にのって保安官が移動するという時点でそれはモロなのだが、それほど様々な映画のオマージュがあり、その時点ですべての映画ファンにおすすめ出来る。

個人的に3話で主人公がとある行動をとり、それに対し、あるキャラクターが「納得がいかない」「理解出来ない」と言うのだが、それがホントにその通りで、そこで「あいたたた…」となるも、4話からの怒濤の展開がすさまじく、この回を観るだけでも価値はあると思う。『アイアムアヒーロー』で言えば、2巻の展開のために1巻を読むといったかんじだろうか。

正直、セリフがあまり多くないので、輸入盤で見ても問題ないとは思うが、もし観られる環境の方は率先してHDDに録画することをおすすめする。ちょっと引き伸ばしてる感あるなぁという部分を差し引いても大傑作。すべてのゾンビファンは必見。というか、DVDレンタルすればいいのに、あういぇ。

Walking Dead: Season 1 [Blu-ray] [Import]

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関連エントリ
2011-04-21 - THE KAWASAKI CHAINSAW MASSACRE

あ、言い忘れましたが、ゾンビは走りません。『ウォーキング・デッド』というのもそういう意味が含まれるのかも。

*1:ゆっくり動いて来て群れるとか噛まれたら感染するとか、その他ゾンビ映画の基礎となる部分を作った人。