春休みよ永遠に……『スプリング・ブレイカーズ』

スプリング・ブレイカーズ』をUS盤で鑑賞。

100%新潟での上映はないとふんで早々にAmazon.comで注文したのだが、何をトチ狂ったのかワーナーでしれーっと上映してたというオチ。いや、たいへんうれしいことなんだけれども。

しかし、見終わったあとにBD買ってよかったと素直に思った。

観たひとのほとんどが「おもてたんとちがう!」というような感想を述べていて、ああそうか、AVのパッケージといっしょでムッチムチのビキニギャル(しかも4人もいる)がフィーチャーされてるからってダマされちゃいかんなとかまえていたんだけど、これがどうして、最後の最後まで大盤振る舞いといってもいいくらい中学生男子心を刺激してやまない。

田舎に住む女子大生があそぶ金ほしさにダイナーを襲い、そのままフロリダまでむかう。そこでセックス、ドラッグ、ロックンロールな日々をおくっていたらさぁたいへん。警察のガサ入れにあい、彼女たちは逮捕されてしまう(しかも水着のままで)。保釈金などあるはずもなく、途方にくれていたら、彼女たちに救いの手を差しのべる男が。しかし、彼女たちはそのおとこのせいでギャングの抗争に巻きこまれ………というのが主なあらすじ。

『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』や『ワイルド・パーティー』をはじめとしたラス・メイヤー作品から少し露出をすくなくして『スカーフェイス』っぽいアレンジをくわえたという感じで、その辺の作品が好きなひとには間違いなくおすすめ。冒頭。超スローモーションで繰り広げられる「スプリング・ブレイク」の様は中盤の吐露じゃないが「マジでこのまま永遠にスプリングブレイクがつづけ」と思った。おっぱいが振り乱され、そこに男は射精のごとくハードなリカーやビールをかけてかけてまくる。こんなことが毎年現実に起こってると思うとうらやましいかぎりでアメリカにいきたくなってしまう。

しかし『ピラニア3D』からピラニアを抜いたようなバカ要素をつよく含みながらも、監督の作家性は出るものだなと思ったのも事実。いかにソダーバーグが『エリン・ブロコビッチ』で自分を押し殺していたかがよくわかった。その作家性が「おもてたんとちがう!」感につながってくるんだと思うが、その違和感みたいなものは始まってから35分をすぎた頃くらいにやってくる。いっても監督はアート系に寄ったような映画を撮るハーモニー・コリンであり、いかように展開しても「あーこれハーモニー・コリンが撮ってるわー」と分かるというか、その監督のことを知らなかったとしても、一筋縄ではいかない監督が撮ってるなということは誰の目にもあきらかで、そのアート指向はまさにこないだ公開された『グランド・マスター』を彷彿とさせるだろう。

画面の色調は『ドライヴ』から影響されたのかやたらとネオンカラーが目立ち、それが幻想的な映像表現として特出。後半。ドラッグをキメキメの登場人物たちが回想したり、夢想したりと、ホントにこれが現実かどうなのかが分からなくなり、時制もバラバラで何がどうなってるのか理解できないところもある。やたらとスローモーションが多用され、クライマックスはすべてがスローでゆったりと展開されるという具合だ。

ただ、退屈しかけるところにエクストリームな表現*1が差し込まれ、ハッとさせるので、凡百の退屈な芸術映画の枠に入れられないのも事実であり、それを中途半端*2と取るか、見たことない映画と取るかで評価がハッキリと分かれるだろう。ぼくは冒頭にも書いた通り、最後の最後まで見せてくれてるじゃんとかなり好意的に受け取ったが。

というわけで、『ピラニア3D』的なものを想像すると肩すかしを喰らう感があるが、目の保養になることは間違いない。劇場で見て良いと思った方はすぐにブルーレイで観ることをおすすめ。バッキバキの映像の恩恵受けまくりで大興奮です。

*1:いわゆる、おっぱいやセックス、ストリップシーン

*2:射精させてくれない感じ