Sweet Rain 死神の精度

10時から『Sweet Rain 死神の精度』鑑賞。とても不思議な気持ちになれる映画だ。別におもしろくはないし、飛び抜けた感動もないし、すごい!と思わせといて対した事ない伏線など、どれをとっても普通なのだが、その普通さがなんか穏やかな、不思議な余韻を感じさせてくれる。

日本語の演技は今ひとつの感がある金城武だが、死神という役で、さらに言葉をあんまり知らないという設定により、初めて活きた気がする。いや、私、言っとくけど、金城武、大ファンですから(笑)女の子か!ってつっこまれそうだけど(笑)地味という小西真奈美、演技はイマイチだが、若さが溢れてるという印象の石田卓也、まったくヤクザに見えないが味のある光石研、あと冨士純子も良い。

『Sweer Rain』は説明が極端に少ない映画だ。『恋空』で感動するようなバカには到底理解出来ないような、説明の無さである。その説明のなさこそが伏線であって、それ故に先が読めなくはないが、いつの時代なのか?果たしてあのキャラはその後どうなったのか?というのもまったく説明がなく、それを端々で、しかも映像で分からせてくれるのは最近の映画で極端に少ない。そういう事をしっかりと演出してくれているのは好感が持てた。

個人的に1番感動したのは人間の死は特別じゃないと言い切っているところだ。私はずっと前から人間がバカスカ虫けらのように死んでいく映画こそ、現実であって、リアルだと思っていて、それは何回もこのブログに出て来た事だから、いいとして。

人間の死は特別だと勘違いしてる映画が山ほどあるから困り者なのだが、

『Sweet Rain』は人間の死がメインテーマの映画なのに、決して人間の死で映画が立ち止まらないのだ!

よく人間が死ぬシーンをクローズアップでこれでもかと描いて、映画の流れをストップさせてしまう事がよくある。難病でどーのこーのとか、若いヤツがよくなるガンがどーのこーのとか、余命半年でどーのこーのとか言って、散々喋った後に、がくっ!と死んで、おい!目ぇさませよー!なんだよー!うおー!みたいな演出があるが、そんな事は観たくねぇよ!いいから早く次のシーンに行け!と思ってしまうのは私だけではあるまい。

七人の侍』が偉大だなと思ったのは、侍達の死が虫けらのようで、そこを執拗に描かないところ。千秋実は1番良い扱いで死んでいくが、後はどしゃ降りの中で見るも無惨に死んでいく。『ワイルド・バンチ』は『七人の侍』に影響を受けて、スローモーションが使われているが、『ワイルド・バンチ』もそこをしっかりと分かっていた。最近では『トゥモロー・ワールド』もそうだった。

話を戻そう。『Sweet Rain』はそういうどーでもいい(散々喋った後に、がくっ!と死んで、おい!目ぇさませよー!なんだよー!うおー!みたいな演出)描写が一切ないので、不思議な余韻を残す事が出来たんじゃないかなぁとも思う。お涙ちょーだいのテーマなのに、お涙ちょーだいの演出をまったくしていないのが『Sweet Rain』のおもしろさだろう。

音楽が重要なテーマのように扱われているが、意外とそんな事もなく、もっと小西真奈美の歌で遊べたような気もするが、あえて、そういう部分を隠し味的に使ったのも良い。なかなかウエルメイドな作品でございました。