死は尊いか?

昨日の夜、赤塚不二夫の葬式を映していて、タモリが「私はあなたの作品です」と言った事にグッときた。

んで、ネットしてて、あるマイミクの日記でその事が出てきて、そこにコメントして、話の流れで「人間の死は対した事じゃない」とコメントしたら、「それでも人間の死は尊いもんだと思う」と返された。んで、その事について、ちょっと考えてみたので記事にした。

よく、私はブログで映画の事を書くときに死ぬシーンで「人間は虫けらのように死ぬべきだ」と書く。それはあくまで死に上も下もないという考え方であり、どんなに偉いヤツでも、どんなに悪いヤツでも死ぬ時は一緒だから平等に描くべきだという事だ。だから人が死ぬ時に過剰に死を描く映画は嫌いで、黒澤明が偉いなと思ったのは、『七人の侍』でも千秋実は弔ってもらってるけど、三船敏郎にしても、宮口精二にしても、戦場の中で虫けらのようにバタッと死んでそれで終わる。人間はどう死んでいくべきか?というのを追及した『生きる』でも、死を感情に描いてないと言うか、ドラマチックだけど、冷静に考えると公園の片隅でブランコに乗って死んでるわけですから、成瀬巳喜男の『浮雲』も小津安二郎の『東京物語』でも死は唐突に訪れ過剰に描かれない。

じゃあ、それは人間の死について軽視してるのか?と、そう言われると困ってしまうが、例えば、地震で何万人が死ぬと数字になる。でも偉人が死ぬとまるで神になったかのようにメディアは持ち上げる。死という概念とは遠い話だが、まずその感じがすごく嫌いだ。

あと、死ぬと全てが許されるみたいな感じがすごく嫌いで、汚職した政治家が自殺してあやふやになったりするのもどうなの?と、三島由紀夫だって、死ななかったらただの犯罪行為だし、カートコバーンだって、尾崎豊だって、覚醒剤やってて、それは犯罪ですから。覚醒剤をやったりしてると、やってる最中はすごく叩くけど、覚醒剤が原因で死んだ人にはなんか甘い気がするのは私だけだろうか?

だから、そういう部分が混ざり合って死が特別扱いされてる事に嫌悪感があるのかもしれない。

でも、やっぱりそんなオレだって、身近な人が死ぬとなんとも言えん気持ちになる。これは誰にでも当てはまるかもしれないが、やっぱり大切な人が死ぬと悲しい。そう考えると命は尊い。やっぱり自分にとって身近な人間の死こそ特別なものであり、人間とは失って初めて大切だった事に気付く間抜けな生き物なのかもしれない。逆に考えれば、他人が事件に巻き込まれた死は客観視してしまうドラマティックなものであり、身近な死のみに過剰反応してしまうのが私という人間だろう。なんてヤツだ。まったく。

そこで疑問だ。

人間の死は尊いのか?

命が尊いのは分かる。でも人間の死は尊いだろうか。

「死が尊い」と検索するとなんと16万件もひっかかる。ちなみに「命が尊い」と検索すると12万件で「死が尊い」よりも少ない。

という事はだ、世間一般で「死が尊い」と思ってる人の方が多いという事になる。

尊いという言葉を辞書でひいてみる。

(2)敬うべきさまである。たっとい。
(3)(精神的な意味で)価値が高い。貴重だ。また、意義深く重大である。たっとい。
(4)(感覚的な意味で)価値が高い。すばらしい。

そう、私も尊いという言葉はやっぱり価値があるとか、価値が高いとかそういう雰囲気がある。
貴重で重大。敬うべきで価値が高いという意味が当てはまるだろう。

そこで、人間の死は尊いのか?に繋がって来るのだが、
もし人間の死に価値があり、尊いものならば、

自殺にも価値があるという事になる。

自殺に尊いイメージってあるか?少なくともオレにはない。『ミリオンダラ・ベイビー』なんか観ると尊厳死という事に対していろいろ考えさせられるが、やっぱり自殺ってしちゃいけないだろ?自殺は絶対的にいけないことだ。だからマスコミが練炭自殺のやり方なんて報道したらマズいんだよ。誰か「死が尊い」っていうのはどういう事なのか教えて下さい。自殺と天寿をまっとうして死ぬのは基本的に違うのかなぁ。だから死ぬ事が尊いって事が私のようなノータリンには理解出来ないので、誰か「命が尊い」のと「死が尊い」はどっちが正しく、どっちが間違ってるのか教えて下さい。

ハッキリ言えば、人間の命も動物の命も命に変わりない。命とは尊いものだ。人間が他の動物の命を奪って生きている以上、人間は生まれながらにして原罪を背負っており、そんな生き物が死について尊いなんて言えるのだろうか。

私が今言ってる事は道徳的には反してるかもしれない。何を!と思ってるヤツもいるだろう。でも人間ってのはどこまでも自分勝手な生き物で、他人の死など基本的には気にしない生き物だと思う。しかも常に「こいつ死んでくれねぇかなぁ」とか言って、誰にでも殺意を秘めたりしてる私のようなクズは「死は尊い」など口にしてはならないなぁと思う今日この頃であった。あのね、私は人間ですよ、飯を喰ってセックスするだけの人間様なんですよ。聖人じゃないっつーの。