クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ

我慢出来なくなって『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』をビデオでレンタルしてしまった。

帰って『夕陽のカスカベボーイズ』鑑賞。

私は『キートンの探偵学入門』『カイロの紫のバラ』あと酷評されてるが『ラスト・アクション・ヒーロー』が大好きだ。この3作に共通するテーマは映画の中に入り込む話であるという事。映画好きならば誰もが一度妄想する映画の中の世界。それは映画の中に入るというのは映画の中でしか出来ない事。

『夕陽のカスカベボーイズ』は映画館のスクリーンの中に入り込んでしまって、そこから帰る方法を探すというストーリー。だが入り込むのはなんと西部劇の世界!

何処かで観たような風景と何処かで観たようなパーツと場面で構成され、物語的にも前半は重く、後半は機関車と自動車のチェイスという怒濤のクライマックスで魅せてくれる。

『夕陽のカスカベボーイズ』がおもしろいのは映画のパロディがてんこ盛りだという事。特に西部劇が好きならば、感動も倍増するだろうし、間違いなく西部劇が好きな人の方がおもしろさが分かるはずだ。

デブで福耳の映画オタクのマイクはマイク水野こと、水野晴男。しかも、脂汗をかいてるところは明らかに西部劇の演出。超クローズアップでしんのすけが汗をかくのはセルジオ・レオーネだし、みさえはマリリン・モンローばりの衣装を着て、ソフト・フォーカスで登場する(笑)しんのすけが映画の中で来ている服は『リオ・ブラボー』のジョン・ウェインの服で、ちゃんと酒場にはクラウス・キンスキーが入って来る(しかもクラウスって名前)クラウス・キンスキーだけでなく、ユル・ブリンナー、マックイーン、コバーン、ブロンソンそっくりのキャラ出て来て、極悪人を演じるジャスティスは顔こそジョン・ウェインを悪くした感じだが、声はなんとあの次元大介で有名な小林清志である(小林氏はマックイーンの声もしていた)カスカベ防衛隊の合い言葉を思い出すシーンでは、「ストレンジャー!(『荒野のストレンジャー』)」「ペキンパー!(サム・ペキンパー)」と叫び、ジャンゴにかかせないガドリングガンもマカロニ・ウェスタンにかかせない大殺戮も出て来る。しかも殴られて血も出るし、リンチもあるし、馬に引きずられたりもする!

そして「映画の中こそ、本当の自分なんじゃないか?」「自分の生きてる世界よりも映画の中の世界の方が自分らしく生きれるのではないか?」というのは完全に『マトリックス』と一緒だ。特にクライマックスでパワーアップするのも、ニセモノの世界だからこそ、カンフーの達人になって拳銃の弾も避けれる『マトリックス』と類似している。

『夕陽のカスカベボーイズ』には西部劇特有の決闘シーンがない。だが、あまり西部劇に寄りすぎると子供には理解不能だと思うので、クライマックスの展開は思い切った判断だが、ある意味で正解とも言える。

映画の世界でしか生きられないキャラクターを忘れる事が出来ないしんのすけだが、ふとした事で現実を取り戻す。このラストは「最近の映画は観たそばから忘れてしまう」というメッセージが込められてるようで興味深い。

と、感想を書かずに突っ走ったが、個人的な感想を言わせてもらえば、映画の中に入り込むというパーツと西部劇の世界をバッチシかみ合わせた時点で最高!確かに『オトナ帝国』や『戦国大合戦』に比べると劣るが、もちろん娯楽映画としては何の不服も無い作品だ。