神田川淫乱戦争


神田川淫乱戦争』鑑賞。黒沢清の35ミリデビュー作。タイトルから分かる通りピンク映画。結構いろんなところでは学生映画のノリとか、素人臭いと言われてるが…

もう最高すぎ!オレ大好きだわ!この映画!

正直『ドレミファ娘の血は騒ぐ』よりも全然いい!ハッキリ言ってすごい映画だ!黒沢清フィルモグラフィーの中では全然完成されてないけども、もし、自分が17歳くらいの時にカメラ渡されて、これでピンク映画撮ってくれと言われたらこんな感じになると思う。

だから自分が初期のゴダールにハマってた時の事を思い出したし、そういうのにカブれた恥ずかしい感じやそれでも好きだからこうなるのはしょうがないという感じもあって、ものすごく共感した。なんか昔、自分が作った曲が押し入れの奥から出て来た感じというか。書いたマンガが出て来たというか。

これ公開されたのが83年だが、それでもまだゴダール熱は冷めてなかったらしい。全編、いわゆるゴダール的な手法を使った、ピンク映画で、『ドレミファ娘の血は騒ぐ』でもそのテイストは観られたが、『神田川淫乱戦争』はそれがむき出しになっている。

ストーリーはものすごく単純だ。神田川沿いのアパートに住む明子は恋人とセックス三昧の日々を送るが、愛情を感じられず、流れにまかせたセックスをするようになる。そんなある日、同じアパートに住む友人雅美から、川向こうのマンションに住む母子の様子がおかしいと電話がくる。双眼鏡で覗き見すると、そのマンションで受験中の息子が母親に犯されているのだ!「これはいかん!」「実にいかん!」という事で、2人は息子を救出する事を決意する。

ロングショットの長回しは、執拗に乱闘や暴力を映し続け、延々これでもか!とカメラを回し続ける。この辺はゴダールの映画を観ているとニヤリとなってしまうのだが、黒沢清がオリジナルなのは、セックスシーンも延々長回しでカメラをあまり動かさずに撮るため、なんか他人のセックスを覗き見してるような感覚に陥っていく。しかも飛び切りかわいい女優ではないし、男優も冴えない男なので(恐らくあえてだと思われる)ものすごくリアル感が出て、生々しい。だが、その生々しいセックスシーンで黒沢清はこれ見よがしなジャンプカットを入れている。これはゴダールがシリアスな場面にミュージカルを入れたり、突然主人公がカメラ目線になったりする演出に似ている。物語の中に取り込みつつ、観客が映画を観ている事を映画の中で自覚させるのだが(そんな事をする意味があるのか?)ゴダールもそれを運転するシーンでやったりしたが、セックスシーンではやってなかった(笑)

ナレーションで心情を延々語ったり、唐突な暴力があったり、ラストの音楽もミシェル・ルグランを彷彿とさせるなど、徹底したゴダールっぷりを披露。おもしろいのが、この作品の助監督をつとめてる周防監督は同じピンク映画の『変態家族 兄貴の嫁さん』で小津のパロディを徹底的にやってるということだ。『変態家族』は観てないのだが、小津さんが好きなら絶対に観た方がいいと言われてる作品…レンタルしろ!

神田川に橋がかかってるのに、わざわざ川を渡っていったり、階段を転がり落ちたり(『軽蔑』のオマージュ?)シュールなシーンも全開だが、とにかく最高だ。『ドレミファ娘の血は騒ぐ』の洞口依子のような飛び切りかわいい女優がいないという弱点はあるが、『ドレミファ娘の血は騒ぐ』よりも、全然上だと思う。

神田川ってある世代にはシンボリックなものだと思うけど、それを使ってピンク映画を撮り、さらにゴダール的な演出で埋め尽くすっていうのは、なかなか出来ない事だろうなぁと思ってみたりした。こういう映画って今やったらダサいとか言われちゃうのかな?あういぇ。