『容疑者Xの献身』のすごい演出

おでんを喰らいながら、酒を飲む。日本酒が最近無茶苦茶うまく感じる。と言っても合成酒とかではなく、良い酒を飲んでるからというのもある。今の若い人は日本酒離れが多いというか、日本酒嫌いな人が多いが、それは良い酒を飲んでないだけだと思う。というか、ホントにうまい酒を飲んだら、どの種類でもうまいと感じるものだ。だからオレに高いワインを飲ませてみてください。たぶん、うまいというはずだから。

さて、昨日は久保田と雪中梅を飲んだのだが、これを定価で買えるというのは、新潟に住んでる人の特権だと思うなぁ。これで日本酒が嫌いな人が居るってんだから、かわいそうだ。こればっかりはホントにかわいそうというか、哀れである。人生半分損してるぞ、まったく。

酒で思い出した。そういえば、『容疑者Xの献身』で湯川が旧友である石神を訪ねていくシーンがあって、そこで湯川が酒を持って行くんだけど、確か、その時に持って行った酒ってのが、スコッチのボウモアで、ちらっとラベルが見えた気がして、気になってたんだけど、検索してみたら、結構10件くらい引っかかってね、酒好きな人の酒に関するブログに引っかかったんだけど、日本で気づいたのはオレだけだと思ってたんだが、さすが見てる人は見てるなぁという感じだ。

ボウモアってのはシングルモルトなんだけど、かなりピートの香りがきつくて、それはそれは、ラフロイグなんてもんじゃない。旧友である天才数学研究者を訪ねて、ボウモアという、言えば、変わり者の酒を持って行くなんて、なかなか粋な演出なのだが、オレがもっとびっくりしたのが、

寿司をつまみにボウモアを飲んでるんだね。

これ実際、知ってる人は知ってる事だけど、

スコッチウイスキーと寿司って無茶苦茶合うんだよ。

これを聞いて、『えー!?』って半信半疑のヤツは、一生カキを喰いながらシャブリでも飲んでろ!と言いたい(白ワインとカキは合わないと「美味しんぼ」でも「もやしもん」でも書いてたよ、そんな事言うのは食通気取りのバカですな)

湯川はすべての物事を科学的に解明していく。料理をする時も、既成概念にとらわれず科学的にウマい物を突き詰めて行く。恐らく、ボウモアと寿司も科学的に分析してたどりついた結果だろうが、
このシーンは小道具の人が偉いのか、美術の人が偉いのか分からんが、これを演出した人は、とにかく飲む事と食べる事がすげぇ好きな人なんだと思った。

もしかしたらそれは偶然の産物かもしれないが、だったら寿司じゃなくても、ピーナッツでもいいんだもんね。「なんで、寿司とウイスキーなんだよ、合わないじゃんか」と言う人がいたら、その人の舌だとか感覚はまったく信じない方がいいです。しかもブレンデットじゃなくて、ボウモアみたいな一本芯の通ったシングルモルトの方が合うんだよ。寿司って。正確にいうと、刺身と醤油が合うんだと思うんだけど、

このほんの数秒のシーンにも気を抜かない、美術、小道具、監督は偉い。もしかしたら福山雅治のアイデアかもしれないが、このシーンだけで湯川の性格や石神に対する想いなど伝わってくるではないか。

映画ってホントにおもしろいもんですねぇ。