『クローバーフィールド』は『スーパーマリオ64』が元ネタ?


11月20日、いよいよWiiで『どうぶつの森』が発売される(あ、そう言えば、KONAMIから『どうぶつの森』のパクリ丸出しのゲームが発売されるんだった。ちゃんとした記事にすればよかった)、ゲームをほとんどしなくなってしまったが(ヒラシタから借りた『マリオギャラクシー』もクリアしてねー)、『どうぶつの森』は私の家族も全員するし、ゲームを全くしない彼女もハマっているし、私自身も好きなゲームの1つだったりするので、恐らく買うであろう(妹に半分金出してとでも言おうか)

んで、そのために久しぶりにWiiを起動して、アップデートする(WiiMacWindowsと同じようにダウンロードで進化するのだ)。リモコンの電池などぬかりないかどうかチェックしてたら、『スーパーマリオ64』が目に映ったので、久しぶりにプレイする事にした(Wiiは過去のゲームソフトをダウンロードして遊ぶ事が出来るのだ、おお、すばらしーっていうか、それ目当てで買った)やっぱり『スーパーマリオ64』の箱庭感はいいなぁと思ってたのだが、ゲームをプレイしていて、ある既視感に襲われた。プレイしてる感覚というか、映像そのものが、「最近、なんかでこれに似た体験した気がする」という感じで、思い出せなかったのだが、しばらくして思い出した。その映像とは『クローバーフィールド』である。

クローバーフィールド』は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と非常に類似点が多い作品だ。フェイクものであるという事や、素人が撮ってる感丸出しのところや、手ぶれが多く気持ち悪くなる点なども一緒だが、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の映像と『クローバーフィールド』では決定的に違うところがある。それは視点の違いだ。

ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は最初からドキュメンタリーを制作するという設定なので、カメラもインタビューした人の正面のカットなどが多く、これは和製『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と言われている『ノロイ』も一緒である。こちらも心霊TVを制作しているので、だいたい正面からのカットが多い。ところが『クローバーフィールド』はもう観た人ならお分かりだと思うが、カメラは主人公ロブ・ホーキンスを後ろから追う。




ロブが走ればカメラは後ろから走って追い、ロブが地下鉄を歩けば、歩いて後ろから追い、ロブが瓦礫の山と化したマンションをよじ登れば、カメラもボブを後ろから追う。執拗にカメラはロブを後ろから追うが、それはまるで、飛んだり走ったりするマリオをひたすら後ろから追い続けるジュゲムのようである。


クローバーフィールド』に先駆けて制作されたスピルバーグの『宇宙戦争』も『ゴジラ』や9.11の悲劇を元に映像は作られていて、トム・クルーズの一人称であるところも一緒だが、最初にトライポッドが襲撃して来たとき、逃げるトムをカメラは前から捉えていた。トムが走って逃げる。トムは走って逃げるのだが、トムが見ているはずの視点はほぼ映らない。カメラはトムが走るスピードに合わせてトラックバックしていく。いや、この場合、逃げるトムの表情を前から写すのは当たり前であって、『クローバーフィールド』が映画的じゃないだけなのだ。そもそも得体の知れない何かが襲って来たとして、それをカメラにおさめるのであれば、どっかでとどまって遠くから撮ればいいだけの話しだし、ロブの行動を記録するという使命感に駆られたのなら前にまわって撮るのはあまりに不自然である(というか、あの状況で後ろ歩きしながら撮るというのは報道のカメラマンくらいしか思いつかない)

主人公の行動を第三者が後ろから追うというのは、自分が見ている視野と同じという利点があり、その視野に広がる世界が箱庭的で、自分もその中で右往左往しているような感覚に陥るという効果がある。んで、この感覚というのは『スーパーマリオ64』をプレイしている感覚と一緒である。

今でこそ3Dゲームの多くは(というかそのすべてが)『スーパーマリオ64』と同じように、後ろからカメラが追うのだが、実は『マリオ64』以前の3Dゲームは、3Dのようで、2Dであり、SEGAが出した『クロックワーク・ナイト』や『ナイツ』なんかも3Dの映像でありながら、それは演出だけで、基本は2Dのアクションなので、1つの箱庭の中を縦横無尽に動き回るのは『マリオ64』が最初である。このカメラの動きには苦労したようで、最初はカメラがステージ上の穴に落ちて、ずっと上空を写し続けるなんていう事もあったようだが、そのシステムを完璧に機能させた『マリオ64』は3Dアクションゲームの先駆者になった。このため、『マリオ64』のフォロワーは山ほど生まれる事になり、PSのゲームである『サルゲッチュ』や『マキシモ』、さらにマリオに影響を受けて作られた『ソニック』もこのカメラシステムになり、映画的なカットの中を動くという『バイオハザード』ですら、4作目になると、『マリオ64』と同じカメラになった。

マリオ64』に関する批評で「よく考えるとマリオの後ろ姿をマジマジと見たのはこれが最初だ」と書かれてるのがあって、それは3Dになったからこその意見とも言える。マリオが見ている視点に近づけるため、マリオは後ろ姿しか映らず、ヒゲもサロペットも意味がないものになってしまった。もっと言えば、マリオのキャラだけ使って、ゲームの文法はまるで違うものになってるのはプレイすれば一目瞭然。そして、このシステムは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』で劇的な進化を遂げるようになる。

今思えば『クローバーフィールド』は箱庭感が強い映画だった。メイキングを見てさらにハッキリしたが、『クローバーフィールド』に出てくるワンシークエンスは、1つのセットで展開される。自由の女神が飛んでくる道路、ブルックリン橋、地下鉄、ベスのマンション、ニューヨークの街、セントラルパーク、それらはリアルなセットで作られたいわゆる箱庭であるが、背景はCGで作られていて、本物の街に見える。この本物そっくりの箱庭をロブが動き回り、それを後ろからカメラで追うというのは、まるで3Dのゲームをプレイしている時の映像と類似していて、もっと言えば、そのブルックリン橋やベスのマンションなどは主人公がクリアしなければならないステージの1つ1つと考えられるし、もっともっと言えば、怪獣が暴れ回ってる街を走り抜けながら離れた彼女に会いにいくというプロット自体もクリボーとかノコノコだらけの箱庭を走り抜けてピーチ姫を助けにいくという設定に似てなくもない。『マリオ64』が発売された時3D酔いなんていう言葉も出て来たが、『クローバーフィールド』も画面が激しく揺れるので車酔いに似た症状が出るなんていう注意書きが出たあたりも似ている。だから『クローバーフィールド』はゲーム的と言えばゲーム的であり、それを演出するならば、ああいう映像になる事も納得で、それを素人が撮ってしまった感にした事は、凄まじいアイデアと言えば、アイデアなのだ。

さて、ここまで書いて来てなんなのだが、この考察には何の根拠もない。クローバーフィールド+3Dゲーム」で検索したら、『クローバーフィールド』に似たゲームがあるという記事が1つだけあっただけで、あとは「3Dゲームをやりこんできたからこの手の映画は絶対に大丈夫!」というふざけた感想しか見当たらなかった。

プロデューサーであるJ・J・エイブラムスは『クローバーフィールド』を制作した動機を次のように語っている。

「8歳になる息子と日本に行っていくつものおもちゃ屋を回ったんだ。そしたらどの店にも必ずゴジラが置いてあってね。ぼくがかつて観ていた大好きな東宝の怪獣映画を思い出したよ。それでそれらの映画から受けた興奮を今の若い観客に与えたいと思ったのがこの映画の始まりなんだ。」
いくつものおもちゃ屋を回った時には絶対にマリオの姿も見かけたはずだし、それよりも、WiiPS3をはじめとした、大量のTVゲームの姿も見かけたのは間違いないだろう。とりあえず誰かJ・J・エイブラムスに「エイブラムスさんはニンテンドーのゲームはお好きですか?」と一言聞いて欲しいもんである。

おまけ:『クローバーフィールド』にすっげぇ似てるゲーム。


参考文献:映画秘宝2008年5月号、別冊宝島820僕たちの好きな『マリオ』と『ゼルダ』、任天堂公式ガイドブックスーパーマリオ64